「才能よりも運のほうが大事」ということを超わかりやすく図にしてみた。
次々と新たなビジネスを仕掛ける稀代の起業家、佐藤航陽氏。数々の成功者に接し、自らの体験も体系化し、「これからどう生きるか?」を徹底的に考察した超・期待作『ゆるストイック』を上梓した。コロナ後の生き方として重要なキーワードは、「ストイック」と「ゆるさ」。令和のヒーローたち(大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太…)は、なぜストイックに自分に向き合い続けるのか。
『ゆるストイック』では、新しい時代に突入しつつある今、「どのように日常を過ごしていくべきか」を言語化し、「私自身が深掘りし、自分なりにスッキリ整理できたプロセスを、読者のみなさんに共有したいと思っています」と語っている。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「才能よりも運のほうが大事」ということを超わかりやすく図にしてみたPhoto: Adobe Stock

成功を支配するのは
「才能」ではなく「運」

 私の提唱する「ゆるストイック」の中身について、具体的に話をしましょう。

 2022年、イグノーベル経済学賞に、非常に興味深い研究が選ばれたことは知っているでしょうか。
 イグノーベル賞というのは、「ノーベル賞のパロディ」のようなものですが、単に「くだらない」と言って片づけてしまうのはもったいないものです。

 というのも、その研究では、「社会的な成功において重要なのは『才能』よりも『運』であることの数学的な証明」が示されたからです。

 私たちは一般的に、「成功する人は才能のある人」という社会通念を共有していると思います。

 しかし、その研究では、「才能」よりも「運」のほうが大事であるという結論が導き出されたのです。

 もちろん、現実の世界がその通りになるわけではなく、世界を単純なモデルに置き換えてシミュレーションした結果ではあります。

 ただ、この研究の面白い点は、私たちが暮らす現実社会を、ある2つの世界の重ね合わせとして捉えているところです。

 その世界とは、

1「才能が支配する『正規分布』の世界」
2「運が支配する『べき乗則』の世界」

 という2つです。
 少し難しい知識なので、図を用いながら説明していきます。

「正規分布」とは、自然界で最も一般的な確率分布です。
 次の図のように、なだらかな山のような形を描く分布のことを指します。

「才能よりも運のほうが大事」ということを超わかりやすく図にしてみた

 身長や体重、身体能力、知能など、人間の統計を調べると、多くのデータが中央付近に集中するように描かれます。

 一方、「べき乗則」は、上位数パーセントの存在に多くの資源が偏る世界です。
 グラフにすると、次の図のように、崖のような形状で右は長い尾のよう(ロングテール)になります。

「才能よりも運のほうが大事」ということを超わかりやすく図にしてみた

 この偏った世界では、異常なことこそが日常です。
 私たちが生きる経済はまさに「べき乗則」の世界に支配されています。

 たとえば、世界の上位8人が保有する個人資産(約48兆6000億円)は、人類の半数にあたる下位の約36億人が保有する資産と同じ額です。

 また、ソーシャルゲームでも、課金額上位5%のプレーヤーが売上の90%を生み出す現象が見られます。

 多くの人が持つ才能やスキルは「正規分布」に従います。

 一方で、経済的な成功は、偶然のチャンスを掴んだ少数の人が大半の成果を得る「べき乗則」の世界にあります。

 そのため、単に「才能があること」よりも、「たまたまの幸運を引き当てること」のほうが重要になるわけです。

「少しの才能」と「運」が成功の条件

 また、正規分布の中央付近に位置する人が最も人数が多いため、成功を掴む「幸運な人」も、その中から生まれる確率が高いです

 少しのきっかけを掴めばいいので、「少しの才能」と「運」が成功の条件になる。
 つまり、少しの才能を持った凡人の中から、圧倒的な成功者が生まれるのです。

 これは私の感覚とも一致します。
 能力の高い人が必ずしも成功しているわけではありません。

 反対に、成功している経営者や投資家が一般の人と比べて特別に優れているかと言えば、せいぜい1.5倍から2倍ほどの差でしかないと感じます。

 それは、数千倍の資産の差を正当化するほどの差ではないのです。 

 ぜひ、この法則を知り、「ゆるストイック」に生きていきましょう。

佐藤航陽(さとう・かつあき)
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。コロナ禍前にSNSから姿を消し、仮想現実と宇宙開発の専門家になる。今は、宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働している。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)に選出される。最新刊『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)を上梓した。
また、新しくYouTubeチャンネル「佐藤航陽の宇宙会議」https://youtube.com/@ka2aki86 をスタートさせた。