事業を休止した鈴川エネルギーセンター事業を休止した鈴川エネルギーセンター(富士市、東京商工リサーチ撮影)

再生可能エネルギー発電の一端を担う木質バイオマス発電で、事業者の経営破綻や事業の休停止が目立つ。投資した資金を回収できず、多額の負債を抱えて法的整理や苦境に陥り、事業を他社に譲渡するケースもある。新規参入が増え、発電燃料の木材チップや木質ペレットの需要が想定外に増えたことや、ウッドショック、円安、輸送費の上昇などが重なって調達コストが上昇し、採算が悪化したことが背景にある。脱炭素社会の実現に向け、国の施策FIT(固定価格買取制度)に沿って木質バイオマス発電は進んできたが、2012年の施行当初から状況は大きく変化した。ブームが終焉を迎えて、これから業者の淘汰が加速すると指摘する専門家も少なくない。(東京商工リサーチ情報部 増田和史)

固定価格買取制度の施行により
木質バイオマス発電の市場が拡大

 木質バイオマスを利用した発電は、カーボンニュートラル(CO2の吸収と排出を均衡させ、差し引きゼロとする)の考え方が前提にある。

 木材を燃やすとCO2が排出される。だが、木材は成長過程でCO2を吸収するため、燃焼時に排出される大気中のCO2と均衡する。また、樹木を伐採後は、新たに森林ができるため、排出されたCO2は再び樹木に吸収される。この発想により、木材を燃やして得られるエネルギーは大気中のCO2濃度に影響を与えない、というカーボンニュートラルの考えが成り立つ。化石燃料とは違い、再生可能エネルギー(再エネ)という論理である。

 日本での木質バイオマス発電は、再生エネルギーの固定価格買取制度(通称FIT、2012年7月施行)で広く普及した。

 FITは、太陽光や風力、バイオマスなどの再エネ発電の普及支援を目的に、再エネ由来の電気を電力会社が一定価格で買い取ることを国が保証する制度だ。固定の売電価格は再エネの種類や発電規模によって細かく規定され、バイオマス発電は1kWhあたり13~40円で価格が設定されている。

 資源エネルギー庁によると、2024年3月時点でこのFITやFIP(市場連動の要素を取り入れた新制度で2022年に開始)の認定を受けた木質バイオマス発電施設は全国523カ所で、このうち244カ所が稼働している。