
新たな懸念がウォール街を襲っている。関税の影響で消費者物価が高過ぎる状況が続く間に、米国の景気は後退するのではないか。
「スタグフレーション」——不況と物価上昇が同時進行する破壊的な組み合わせ——が政策立案者の介入の試みを混乱させる事態への懸念が、株価の底割れを招き、投資家を安全な米国債に向かわせ、米国債利回りを押し下げている。
貿易を阻害するドナルド・トランプ米大統領の措置によって、前年同月比の物価上昇率が米連邦準備制度理事会(FRB)の目標である2%を上回り続ける一方で経済成長が抑えられることを、投資家は懸念している。インフレ率が目標を上回る状態では、FRBは景気の後押しを目的とする借り入れコスト引き下げに消極的になるだろう。インフレとリセッション(景気後退)が併存することになる。
BNPパリバの米金利戦略責任者グニート・ディングラ氏はスタグフレーションのリスクについて、最近の「市場における中心的なテーマの一つ」だと述べた。ディングラ氏によると、同氏の顧客の多くは、成長が停滞すればFRBが介入し、金利を下げて窮地から救ってくれると信じている。「そうした投資家は、FRBには二つの使命もあり、守るべきインフレ目標があるという事実を考慮していない」という。
政策変更の急な流れは、注目の経済データを巡る不安をかき立てている。こうしたデータの大半はまだ1月のものであり、関税の影響を捉えてはいない。最近アップデートされた指標は、経済活動の弱まりとインフレの根強さを示唆している。
12日に発表された2月の消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率が2.8%となり、1月の3.0%を下回ったことで、FRBの二つの使命のうち、成長を促進し十分な雇用を確保する方に関心を向ける余地が幾分広がったため、スタグフレーションの懸念は若干後退した。関税の影響はまだ、消費者物価に完全に反映されてはいない。その一方で、他の指標は経済成長鈍化の方向を示している。