1円でも安く買いたい!AIでポイ活する人がハマる「思わぬ落とし穴」
確かに、消費者の属性やリピートしている商品、購入価格帯や購入サイクルなどのデータを蓄積し学習させていけば、AIがその人に応じた「オトクに買える日」をはじき出すのは難しいことではないだろう。他のアプリでも、通知機能を組み合わせてこんなこともできそうだ。
例えばネットスーパーのアプリに、その家庭がよく買っている商品を学習させ、それがセールになる日を事前に知らせてくれる。ドラッグストアの日用品の購入データから買い替えのサイクルを割り出し、そろそろという時に「近々の割引デーはこの日です、ポイントを貯めたい人はこの日に買うといいです。なお、このメーカー品を買うなら5%オフクーポンが使えます」などと通知する。アプリ利用者はそれを見て、そのオトクに買える日に出かけていく。
こうした機能は、1円でも安く買いたい、ポイントを効率よく貯めたい消費者に大いに歓迎されるに違いない。
初めての道で頼りになるカーナビ
これって「商売」が絡んでいない?
自分であれこれ頭を悩ますことなく、一番オトクな日に買えるのだとすれば、何の文句があるだろう。しかし、疑い深い筆者はつい勘ぐってしまう。この日がいいですよと勧められたユーザーは素直にそれに従う。つまり、AIのアドバイスは、簡単に人の行動を誘導できることにならないか。
これと似たような思いを抱いたことがあった。それはカーナビだ。出張先や観光地に行き、見知らぬ土地を運転する場合、紙のロードマップを見ながら経路を選ぶ人というのは、今や珍しいだろう。大概の人はカーナビに目的地を入れて、その道案内通りに走るものだ。
むろん筆者もそうすることが多いが、それにしてもカーナビはなぜこの道を勧めるのかと不思議に思ったことがあった。目的地まで最速で効率がいい道だから、と素直に受け取ればいいのだが、ここでも裏を読む悪い癖が出た。
ドライバーは疑いをはさむことなくその道を選ぶのだから、ルート上にある飲食店や小売店が自然に目に入る。ちょうど昼時だからランチに寄ろうとか、そこのコンビニで飲み物を買っていこうとか、途中で車を停めることもあるだろう。逆に、カーナビが選ばない道路沿いにある店には立ち寄る機会はない。もしカーナビを商売に利用しようと考えれば、ロードサイドの店から広告料を取り、その店の前を通るルートを提示する道案内アプリを設計することも可能になるのでは――。
これはもちろん、ただの妄想だ。車メーカーのカーナビサイトにはこうある。「ルート案内に使用する道路は、原則、高速道路・国道・都道府県道と、道幅5.5m以上の主な道路です。通常の地図データ以外に、ルート探索専用のデータが収録されており、信号の数や右左折の回数、道幅や道路の種別などの情報から、最適な道路を計算し、ルートを作成しています……」。そう素直に信じていよう。