「子どもが感情的になり、言うことを聞かない」「他の子と比べて、うちの子が遅れていないか心配」「褒美をつい与えてしまう」など、小学校6年間は、良くも悪くも親の影響を受ける最も多感な時期。自分で考えて学ぶ子は、どのような生活環境にあるのか。「指導実績」×「心理学」×「ベネッセのデータ」でわかった最高の教育を「声かけ」というシンプルな方法でお伝えします。誰でも一度は感じたことのある子育ての悩みを、簡単に解決するには「声かけ」を変えることです。『自分で考えて学ぶ子に育つ子育ての正解』より、「ほめ方」「しかり方」よりももっと大事な「声かけ」で、「子育てあるある」に対応したノウハウをお伝えします。

「自己決定感」が高い子の親にある共通点とは?Photo: Adobe Stock

子どもの自己決定感を育てる

「この子はすごい!」と感じた子の親御さんと話してわかったことがあります。とにかく否定しません。周りの子たちとどんなに違っても、周りに合わせるという概念を意図的になくしています。親の思い込みが少ないのでしょう。

「周りの子がやっているから、我が子もこうすべき」
「うちの子だけみんなと違って、いじめられたらどうしよう」
 などとは考えていません。

「こうしたほうがいいから言うことを聞きなさい」
 と押し付けるのではなく、
「どんな道を選ぶかで悩んだら、難しいほうを選ぶといいよ」
 と背中を押します。

「悩んだら難しいほうを選ぶ」は、私自身、大切にしている言葉の一つです。

 自分で決めたことを実行することで、「自主性」と「責任感」を育むことができます。親は子どもが選んだ道を尊重する。決断を判断せず、先回りせずサポートするだけです。

レジリエンスを育てる

 ベネッセ教育総合研究所の調査によると、「やりたいことを応援してくれる」親だと、子は「失敗しても自信を取り戻せる」と思う傾向があります

 つまり、親が応援してくれていると実感している子は、一度や二度の失敗であきらめません。

 このようなことを、心理学では「レジリエンスが育つ」といいます。「レジリエンス」とは、困難や危機に直面したときに回復したり、適応したりする能力のことです。レジリエンスは、これからの時代を生きていく子どもたちのために、必ず必要な力になります。

「これやらない?」「あれやらない?」と先回りしている親が多い世の中です。子どもの「やりたい」の芽に目を向け、「これ、やりたいんだけど」と言ってきたら、応援します。

自分の道を正解にする

 また、「自己決定感」が高いと、自分の行動に対してより積極的になります。自己決定感とは、自分の行動や決定が自分自身の意志によってコントロールされていると感じている状態のことです。ここでいう「決定」とは、進路を決めたり、結婚を決定したりといった大きなことだけを指しているのではありません。「お菓子を買う」「公園に行く」「勉強をする」「友達と遊ぶ」など、「決定」の連続です。

 こうした場面において先回りをするがために、子どもの可能性を狭めているのです。自主性を尊重し、親が待つ。子どもの自己決定感を育てることが、とても大切です。

 自主性を尊重された子どもは、自分の力で行動します。自分で選んだ道を進むことで、自信をもちます。これからの社会で大切なのは、「自分で考え、行動する力」です。

 周りを見ているだけでは、正解はわからない。むしろ正解を探すのではなく、自分の道を正解にする――そんな力が求められています。

 大事なのは、あなたが思った以上に手を出していることに気づくことです。先回りしてあれもこれもしない。キーワードは「ま、いいや」です。自分の中の「しなければならない」を手放し、これからの時代では、こんな考え方もいいんだなと、日々を過ごしてみてください。

(本原稿は、『自分で考えて学ぶ子に育つ声かけの正解』より一部抜粋、再編集したものです)