税務署が厳しくチェックする「やばい経費7選」
2023年10月からインボイス制度が始まりました。「増税ではないか?」「経理の手間が増え、負担が増大する」など、さまざまな意見が出ています。そのインボイス制度の影響を強く受けるのが「ひとり社長」です。しかし、業種・業態・売上規模によっては、「インボイスに登録しないほうがいい」と提案できるケースもあり、戦略的な選択が求められる制度ともいえるのです。
本連載は、経費精算から決算・申告まで、ひとり社長の経理の基本を学ぶものです。著者は、税理士の井ノ上陽一氏。インボイス制度、電子帳簿保存法に完全対応の『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』の著者でもあります。「ひとり社長なら、経理はこれだけでいい!」とポイントをおさえた1冊になっています。

税務署が厳しくチェックする「やばい経費7選」Photo: Adobe Stock

税務署はどこを見ているのか?

 みなさん、令和6年分の確定申告はもうおすみでしょうか。本日は「税務署と経費」をテーマにお話しします。

 税務の判断は、グレーゾーンが多いといわれます。確かに法律には明確に定められていないこともありますし、実務上の慣習もあります。しかし、明確にクロのものはクロですし、シロのものはシロです。順に見ていきましょう。

シロの経費

 シロは、法律に沿って適正に処理されたものです。シロの経費でも、勘違いがあり、意外と計上されていないケースもあります。

クロの経費

 クロは、税務上、絶対に認められないものです。例えば、「領収書の偽造」「架空の経費の計上」「売上を抜くこと」などが挙げられます。税理士として、このクロは絶対に認めません。

グレーの経費に気をつける!

 問題はグレー。法律にはクロともシロとも明言されていないものです。「プライベートとも言えるし、ビジネスとも言える」という経費で、これは判断に迷います。

 例えば、居酒屋のレシート。仕事仲間と打ち合わせに使ったなら、経費となりますが、友人と普通に飲んだだけでは経費になりません。証拠があれば経費に落ちるわけではありません。理由が必要です。プライベートで飲んで、お店が領収書を出してくれると、「領収書を出してくれたから」と経費に入れる場合があります。

 しかし、これは間違っています。お店側としては、「領収書を出してくれ」と言われたら、出さざるを得ません。「いやいや、プライベートで来てるでしょ?」と領収書を出すのを拒むわけにはいかないのです。

「証拠がある→経費になる」ではなく、「経費にできるという判断→証拠がある→経費になる」という関係になります。

 つまり、領収書という証拠だけではダメなのです。怪しいなぁと思う証拠は、他にはこんなものがあります。

注意! こんな証拠が怪しまれる!

①家電量販店で、いつもレシートをもらうのに、ときどき領収書をもらう(仕事に関係ないモノを買っている可能性あり)
②「お品代」という名目の領収書だが、店名は美容院
③お歳暮、お中元という名目で高額のもの(自分で使っている可能性あり)
④遠方の住所の領収書(仕事ではない可能性あり)
⑤日付、店名の書いていない領収書
⑥10万円、5万円といったキリのいい数字の領収書(適当に作った領収書の可能性あり)
⑦金額が大きい飲食費(数人で食事し、払っていないのに領収書だけもらった可能性あり)

 もし心当たりがあれば、やめておきましょう。税理士はもちろん、税務署も、怪しい証拠があればすぐ気づくものです。

 いまや検索すれば店の情報もすぐに出てきます。その店を調べられれば、嘘をついていたこともばれ、ペナルティも重くなりますので気をつけてください。また、1つでもそういった怪しい領収書があれば、「他にもまだやっているのでは?」と疑われてしまいます。

(本原稿は『【インボイス対応版】ひとり社長の経理の基本』を一部抜粋・加筆したものです)