ハンドメイドをする女性写真はイメージです Photo:PIXTA

メンタルヘルス不調により、若手社員が休職するケースが増えている。ある日、うつ病で休職中の社員がSNSで“副業らしき投稿”をしていることがわかった。これは傷病手当金の不正受給に当たるのではないか。社内で疑惑が生じる中、報告を受けた人事部長は社労士・カタリーナに相談することに。グレーゾーンに対する彼女のアドバイスとは?

<登場人物>
稲垣まりえ(26歳): メンタルヘルス不調により休職中のシステムエンジニア
川原英子(32歳): 人事部スタッフ。真面目な性格
橋田部長(54歳): 川原の上司で、A社の人事部長

休職中の社員が、SNSでハンドメイド作品を販売していた?

 A社の人事部長をしている橋田部長。ある日、橋田が出社すると、人事担当の川原英子が浮かない顔でやってきた。

川原「橋田部長、ちょっといいですか? 休職中の稲垣まりえさんのことで……」

橋田部長「ん、何かあった?」

川原「これなんですが……」

 川原は、スマートフォンの画面を差し出した。「ハンドメイド作品、販売中」と書かれたSNSの投稿には、楽しげなコメントが並んでいる。投稿者のハンドルネームには、『まりちゃん』とあった。

川原「この投稿者、稲垣さんではないかと思うんです。以前、彼女が身に着けていた作品と酷似していて。私もハンドメイドのアクセサリーが趣味で、よくこの手の投稿をチェックしているんです。そうしたら……」

橋田部長「これ、本当に稲垣さんなの?」

川原「まだ、本人に確認したわけではありません。でもそうだとしたら、これって副業じゃないですか?」

橋田部長「うむ……」

川原「そもそも稲垣さんは、うつ病で休職中ですよね?健保組合に『傷病手当金』も申請していたはずです」

橋田部長「これが事実なら、不正受給という話にもなってくるな……」

 橋田は苛立ちをあらわにした。病気休職中の副業など、これまでにない事案だ。最近、メンタルヘルス不調の休職者が若手社員の間で増えていることも気になっていた。