よく言われている「うまい伝え方」は本当に有効なのか?

できるリーダーは繊細なメンバーに対してどのように指摘するのでしょうか。世の中でよく言われているポイントがいくつかあります。

1. 「事実」「行動」と「人格」を分けて指摘すればいい

指摘するポイントを「その人自身」ではなく「特定の行動や成果物」であることを明確にすれば、相手は否定された感覚を持たずに聞き入れられる、というアドバイスがされています。たとえば以下のような指摘です。

NG例:「君はいつも締切に遅れるね。やる気も責任感もない人間だな」
OK例:「この企画書の提出が期限より3日遅れたね。次回からそれはなくしてほしい」

ですが、本当にこれでメンバーは感情的に凹まずに聞けるのでしょうか?

人格を否定せず、事実や特定の行動に焦点を当てたところで、相手がしたことにNGを出していることには変わりません。たしかに人格を否定されるよりはよっぽどマシです。しかし、人格を否定していないから相手は凹まずに聞いていられるだろうと考えるのは違います。相手からしたら、これでも立派なダメ出しです。

2. 「期待」を明確にする

また、相手に期待している内容を示すことで、相手の仕事の質が上がるという指摘もされています。

「この資料は、もっとわかりやすくしたいから、データの出典を明記して、結論を最初に持ってくる構成にしてほしかったんだよ。次からは頼むよ。」

と伝えたとしましょう。たしかに、リーダーが期待していること(メンバーにやってほしいこと)はわかります。でも、同時に「期待外れだった」ということも感じます。

少なくとも自分なりに頑張って作ったものが「期待外れだった」と評価されたら、いかがでしょうか? 次回から気を付けることはできますが、気分的には落ちてしまうのではないかと思います。

3. 「理由」を伝える

なぜその指摘をするのか、理由を伝えることで納得感が生まれ、相手が客観的に情報を受け入れられるようになるとも言われます。

たとえば、9時からの朝礼に時間ギリギリに来たメンバーに対して、

「来るのが遅い。もっと早く来なさい」

ではなく、

「来るのが遅い。朝のミーティングには重要な情報共有があるし、9時ピッタリには始めたいんだから、必ず5分前には席についていなさい。」

と伝える、というような話です。

理由がわかれば、押し付けではなくなり「意味があるからやる」という内発的な動機につながる、だから素直に聞き入れられるということです。

しかし、本当にそうでしょうか? いくら理由を言われても怒られたことには変わりありません。

「時間に間に合ってるんだからいいじゃん。なんでそんなこと言われなきゃいけないんだよ」と感じる可能性も大いにあります。理由を言えばいいというわけではないんです。