できるリーダーは、相手がそう考えた前提を修正する
ダメなリーダーは、相手の行動や意見、考え方を修正(というより否定)しようとします。「どうしてこんな書き方をしたの?」「どうして今まで相談に来なかったの?」などと投げてしまいます。
言葉としては理由を聞いていますが、メンバーからすれば「すいません……」としか返せない投げかけです。これは最悪の投げかけです。
仮にメンバーの仕事のクオリティが低かったとしても、「わざと」ではありません。メンバーはメンバーなりにがんばったかもしれませんし、「こんな感じで大丈夫だろう」と判断した結果なんです。そこで「どうして? どうして?」と聞いても、単なる詰問にしかならないでしょう。
大事なのは、メンバーの「前提条件」を修正することです。メンバーの仕事のクオリティが低いのは、メンバーが思っている「前提条件」がズレているからです。
たとえば、実際は取締役会議で使う資料なのに、それを「部内の定例ミーティングで使う資料」と思っていたら、仕上がりが変わります。それは誰にでも起こりうる自然なことです。絶対に落とせないプレゼン案件と、日常の営業資料とでは質が変わっていても仕方がないかもしれません。さらに言えば、「学生の文化祭のノリ」と仕事は違います。
いいか悪いかは別にして、メンバーの仕事の質が低いのは、その前提条件の認識がズレているからでもあります。というよりむしろ、もしかしたら前提条件の認識がズレているからかもしれない、と考えてみてください。
相手は、相手が想定している基準では「可」の仕事をしています。でも、あなたからしたら「不可」のクオリティです。それは相手がサボっているからではなく、相手が無能だからでもなく、両者の基準がズレているからかもしれないのです。
だから、基準を揃え、修正するところから始めてください。
「なんでこんなに適当な資料作るの?」
ではなく、
「今回は取締役会に出す資料だったんだよ。いつもの部内ミーティングだったらこれでいいんだけど、今回はそうじゃなかったんだよな。ぼくらが想定している前提が違ったね」
と伝えてください。
あくまでも、相手がやったことは「(相手の中では)正しい」ということを認めてから修正することが重要です。
実際には、そんなこと認められない! と感じるケースも出てくるでしょう。しかしあなたが怒りを覚えるような状況でも、相手はそんなにたいしたことではないだろうと涼しい顔をしています。この状況で「指摘」だけしたら、「全然大したことないのに、ひどく怒られた。パワハラだ」と逆に言われてしまう可能性もあります。
まずは前提条件を合わせることに注力しましょう。それが令和のリーダーに求められる素養になっていくと感じています。