
米電気自動車(EV)大手テスラの株価は3カ月前の半分程度でしかない。それでもまだ割安とは言えない。
テスラ株は今週上昇する日があったとはいえ、昨年12月半ばに過去最高値をつけてからはおおむね下落傾向にある。下落分のかなりの部分は1月20日のドナルド・トランプ大統領の就任式以降のものだ。株価は10日に急落したが、それより前の週末7日時点で、就任式からの下落率は38%に達していた。最高値をつけて以降の時価総額の消失は約7420億ドル(約110兆円)に上る。
世界的な関税引き上げによって自動車業界全体で販売が抑制される可能性があるとはいえ、テスラほど苦戦を強いられている大手自動車メーカーは他にない。その一方で、テスラほど株式市場で高く評価されている自動車メーカーもない。際立った存在感を放つ最高経営責任者(CEO)、イーロン・マスク氏は政治的分断をあおるような発言をしてきた。同氏がトランプ政権に関与したことで、全米各地のテスラ販売店では抗議デモや破壊行為が相次いでおり、アナリストや市場調査会社による調査ではテスラのブランドイメージが損なわれていることが示されている。
トランプ氏は11日、「イーロン・マスクへの信頼と支持の表明として」テスラの新車を購入すると約束し、支援の手を差し伸べようとした。前日にテスラ株は約5年ぶりの大きさとなる下落率を記録していた。トランプ氏の支援はそれほど大きな助けにはならないだろう。テスラは昨年と同水準の販売台数を維持するだけでも、今年180万台近くの新車を納車する必要がある。