自分の生き方や置かれた状況に「悩む人」がいる一方で、同じ環境にいても「悩まない人」がいます。ではどうすれば、「悩みやすい不幸体質」を卒業して、「絶対に悩まない人」になれるのでしょう。
その方法を教えてくれるのが、書籍『不自由から学べること ―思いどおりにいかない人生がスッとラクになる33の考え方』です。12歳からの6年間を「修道院」で過ごした著者が、あらゆることが禁止された暮らしで身につけた「しんどい現実に悩まなくなる33の考え方」を紹介。悲観でも楽観でもない、現実に対するまったく新しい視点に、「現実の見方が変わり、モヤモヤがスッと晴れた」といった声が多数寄せられています。この記事では本書より一部を抜粋・編集し、「他人に対する不満が消える考え方」を紹介します。

「人間関係で悩んだ」とき、不幸体質の人は「わかりあう努力をする」。では、メンタルが強い人はどうする?Photo: Adobe Stock

わかりあおうとしなくていい

 そもそも人は、わかりあえないことが前提です。
 もちろん、すべての人とわかりあい、信念や正義を理解しあえるに越したことはありません。

 ですが、残念ながらわかりあえない人もいるのがこの世界です。違う環境、性質、文化の中で育まれているのですから、当然です。

「豚に真珠」という言葉は、おそらく皆さん聞いたことがあると思います。
 じつはこれも、聖書にある言葉です。
 この「わかりあえなさ」を表しているようです。

「神聖なものを犬に与えてはならず、また、真珠を豚に投げてはならない。それを足で踏みにじり、向き直ってあなたがたにかみついてくるだろう。」
 ――マタイによる福音書 7章 6節

 わかりあえない人を見捨てろ、という意味ではありません。
 何か諍いが起きても赦してしまい、あなたの愛を求めている人を探しなさい。
 そういう意味なのだと、私は解釈しています。

自分を必要としてくれる人に、ただ、尽くす

 アウシュビッツで他者のために命を差し出したことで有名なコルベ神父様は、生前にキリスト教の布教のために長崎に来たことがあります。

 その際に同行したゼノ修道士も、キリスト教の歴史において有名な人です。

 ゼノ修道士は、白いヒゲ、黒の修道服、黒い鞄、黒いドタ靴がトレードマークで、とても明るく、「青い目の福の神」と称されていました。長崎で被爆後、全国の戦争孤児や、上野や浅草で暮らす貧しい人たちを救済したことで知られています。

 誰でも彼でも助け、連れてきてしまうことに、役所や施設の人も困惑することが多かったそうですが、そんな声は無視して孤児を救済し続けました。

 戦後の高度経済成長下、日本政府はゼノさんの多年の功績に勲四等瑞宝章の叙勲をおこなったそうです。77歳になっていたゼノさんは「ありがとう」と勲章を受け取ったあと、「これ、天国にいらないね」と言いながら黒い鞄にしまい込み、取材に来ていた記者たちを笑わせたといいます。

相容れない人にかまうほど、人生は長くない

 そのゼノ修道士の口癖は「ゼノ、死ぬ暇ない」でした。
 そしてご自分を「人々の善意の運び屋です」と仰っていました。ゼノさんの活動を受け継いでいる団体は、いまだに日本各地に存在します。

 自分とは相容れない人のために使うほど、人生は長くはありません。

 本当に困っている人のために尽力する。
 自分の祖先や未来の若者たちのために尽力する。

 自分を批判してくる人や、敵意を向けてくる人のことはさっさと赦してしまい、こういったことに貴重な時間を費やす。

 それこそが、本当に豊かな生き方なのではないでしょうか。

(本稿は、書籍『不自由から学べること ―思いどおりにいかない人生がスッとラクになる33の考え方』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です。書籍では他にも、「悩みがスッとラクになる考え方」を多数紹介しています。)