
神谷尚志
金価格が上昇するなどドルの信認低下を示唆する動きが続く中、トランプ政権による関税政策の背景に潜む真の問題、財政・経常の健全性を示す4つの指標――財政赤字、政府債務、経常赤字、対外純債務――すべてにおいて、米国が危機的な水準に達しつつあるという現実が忍び寄っている。米国が貿易摩擦を激化させてまで保護主義的な政策に踏み切る理由を探ることで、トランプ関税の意味が単なる貿易上の戦術ではなく、米国の構造的問題への苦し紛れの対応策であることが見えてくる。中国の米国債売却や金買いといった動きが、米国の信用に与える含意、そして過去のニクソンショックやプラザ合意と本件を比較することで、今回の問題がいかに深刻で持続的な影響をもたらす可能性があるかを論ずる。

米国株式市場は割高感を強めており、過去30年に1度の暴落が訪れる可能性が指摘されている。特に、トランプ政権の関税政策がインフレや景気後退を引き起こすことで、そのリスクが一段と高まる可能性がある。トランプ政権が推し進める関税政策は、米国内の製造業復活を狙いとしているが、それは必ずしも米経済全体の成長を促すものではなく、企業収益の下振れや株式市場の下落リスクを一層高めることになる。米国株が直面する割高リスク、関税政策の影響、そして市場が調整局面に入る兆候について検証する。

金価格の上昇が続いている。これは単なる投資対象としての人気の高まりだけではなく、世界経済や金融市場に対する不安の表れとも考えられる。特に、米国の財政不安、制裁リスク、そして金保管の不透明性に対する疑念が、金の需要を押し上げている。こうした動きの背景には、世界の中央銀行や投資家が「安全資産」としての金を見直し始めている現状がある。本コラムでは金の持つ特性と価格変動の要因を整理し、過去の金価格の動向を振り返りながら、現在の金市場を取り巻くリスクと今後の展開について考察するとともに、金価格の上昇が示唆する市場の不安心理が、今後どのような影響をもたらすのかを検討する。

25年間停滞していた日本経済がついに動き出し始めた。1997年から2022年の間に名目GDPが減少し、178か国中ビリという屈辱を味わった日本。税収増が見込めず、社会保障費の増加が財政を圧迫し続けた結果、増税と経済成長の抑制が悪循環を生む状況が長らく続いていた。しかし、2023年以降、物価上昇や賃金上昇の好循環が始まり、経済成長が現実味を帯びてきた。日本の名目GDPが再び拡大し始めた背景を探り、財政健全化と経済成長を両立させるための道筋を論じる。輸入物価高騰が引き起こしたインフレと、それに伴う賃金上昇の波が、いかに日本経済を押し上げたのか。そして「減税」というこれまで考えられなかった政策選択肢が台頭しつつある中、政府の債務拡大を伴う成長推進が可能なのかをデータや国際比較を交えて分析する。

2024年、日本経済は大きな転機を迎えた。輸入物価の上昇をきっかけに賃金上昇と物価上昇の連鎖が始まり、国内経済が拡大に向かう兆しを見せている。この変化は2025年の日本株相場にどのような影響を与えるのか。株価の「上昇」「下落」「横ばい」の三つのシナリオを提示し、それぞれの展開を支える要因とリスクを考察する。また、米国経済の不確実性や地政学リスクといった予測困難な要素が、日本市場にどのように作用するかも検討する。

日本は2023年末まで33年連続で世界最大の対外純資産を保有する国だった。ところが2024年(今年)3月末に日本の対外純資産はドイツに抜かれ世界2位になった。日本経済において対外純資産トップからの陥落が意味することを国際収支体系から明快に解説し、日本の今後の行方と課題を提示する。

8月5日、日本株は歴史的な暴落となったが、それに合わせる形で円高も大きく進んだ。日本株と円相場は無関係ではなく、両者の動きに影響した要因が存在する。日本株の下落と円の上昇が同時に進んだ理由と、両者の変動が大きかった理由を解説するとともに、今後の日本株と円相場の見通しを米景気の行方とともに論ずる。

「マイナス金利解除後」の世界で、日本株はどのように動くと見ればよいのか。米国で金融政策正常化が行われた際の株価への動きを振り返るとともに、今後のシナリオを展望。日本株の行方を読み解く上で押さえておきたい「三つのポイント」について、市場経験約40年のベテランエコノミスト、神谷尚志氏が大展望した。

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日経平均株価が約34年ぶりに史上最高値を更新した。記録的株高に「バブルだ」との警戒感も根強いが、先行きをどう考えればよいのか。市場経験約40年のベテランエコノミスト、神谷尚志氏が大展望する。

米シリコンバレー銀行が経営破綻に至り、金融市場に動揺が広がっている。そのメカニズムを簡潔にひもとくとともに、投資家が気になる今後の市場への影響について、市場経験約40年のベテランエコノミストが展望した。

日本銀行総裁の交代によって、日本経済や金融政策、株式市場にはどのような変化が生じるのか。市場経験約40年のベテランエコノミスト、神谷尚志氏が大展望した。

足元の急速な円安の先、本当に危惧されるのは「株式の死」に至るシナリオだ――。市場経験約40年のベテランエコノミスト、神谷尚志氏は警鐘を鳴らす。なぜそう考えるのか、現下の投資環境で押さえたい「6つのポイント」などを基に解説してもらった。

市場を揺るがし、野村ホールディングスをはじめとする国内外の巨額損失につながった「アルケゴス事件」。いまだ全貌がつかめない複雑な騒動の全体像を、市場経験約40年のベテランエコノミストが解説する。

日経平均株価が2月15日、30年半ぶりに3万円の大台を上回った。コロナ禍での記録的株高に「バブルだ」との警戒感も根強いが、先行きをどう考えればよいのか。暴落の前触れをつかむ上では今後、2つのポイントを注視しておきたい。
