日米株は“波乱相場”に突入、「J-REIT」をポートフォリオに入れリスク低減効果をPhoto:PIXTA

トランプ政権の関税外交に振り回され、日米の株価は調整し始めた。割高な米国株の比率を落とし米国債を買いますことはリスクを低減させる一法だ。では、日本株のリスクを軽減するにはどうしたらよいのか。割安圏に放置されているJ-REIT(上場不動産投資信託)をポートフォリオに加えることは有効な手段の一つだろう。(龍谷大学経済学部教授 竹中正治)

リーマンショック以来の
割安圏にあるJ-REIT

 トランプ政権の「関税恫喝外交」の展開で、世界経済の景気の先行きに暗雲が生じ、日米の株価も波乱局面に入ったようだ。

 今年1月の筆者論考「新NISA開始から1年、『米国株価指数1強』はいつまで続くか」で述べた通り、株価指数S&P500に代表される米国株は今年年初まで歴史的に非常に割高な水準にあり、いずれ反落・調整局面が到来する可能性が高いと考えていた。

 そこで筆者は株式ポートフォリオに占める米株比率を下るために、2006年から08年にかけて購入し長期に保有して来たS&P500連動ETF(上場投資信託)一部を今年1月に売り、10年物米国債にシフトした。 しかし日本株の下落リスクは、どうしたら良いだろうか。

 投資のセオリーに従えばポートフォリオに占める株式の比率を下げ、長期国債等の保有比率を上げれば、プラスのリターンを維持しながら、ポートフォリオ全体のリスクを低減することができる。しかしながら米国債と違って、日本国債利回りは10年物でようやく1.5%に上がってきたばかりだ。

 日本の当面のインフレ率が2.0%~3.0%で推移すると考えれば、日本国債利回りはインフレ率差引後の実質利回りでマイナスであり、筆者としては現状の利回り水準では日本国債にシフトする気になれない。

 そこで長期債券の代替として考えられるのが、大幅な割安感のあるレベルまで下がっているJ-REIT(上場不動産投資信託)である。J-REITの近年の下落の要因については、昨年1月の「日本株高に出遅れたJ-REITに勝機あり、11年ぶり割安圏の謎を解く」で分析・解説し、投資判断として次の様に述べた。

「日本では債券利回り上昇に対する警戒感は当分続きそうなので、J-REIT価格がすぐに目立って上昇に転じることはないだろうが、年率4~6%の配当利回りを得ながら長期投資の姿勢を貫ける投資家層にとっては、比較的低いリスクで中程度かそれ以上のリターンが期待できる有り難い投資機会が到来しているように思う。」

 図表1に示した通り、J-REITの指数である東証REIT指数は長期国債利回りの上昇に歩調を合わせて(負の相関)昨年1月末の1799から同12月の底値1611まで10.4%下落し、3月7日現在1654となっている。

 現在のJ-REITの平均分配金利回りは5.15%で、5%から6%台の銘柄が軒を並べている。また割安・割高のひとつの判定指標となるNAV倍率(Net Asset Value=REIT価格/一口当たり純資産時価)も1.0を割れ、0.6~1.0のレンジに分布している。

 これはリーマンショック後の09年以来の割安圏だ(参照:「不動産投信情報ポータル」Yahooファイナンス)。

 ここまで下がれば、さらなる反落の余地は限られており、価格が横ばいでも5~6%台の分配金リターンが得られる。価格が反転上昇すれば、それにキャピタルゲインが加わる。