「構想力・イノベーション講座」(運営Aoba-BBT)の人気講師で、シンガポールを拠点に活躍する戦略コンサルタント坂田幸樹氏の最新刊戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』(ダイヤモンド社)は、新規事業の立案や自社の課題解決に役立つ戦略の立て方をわかりやすく解説する入門書。企業とユーザーが共同で価値を生み出していく「場づくり」が重視される現在、どうすれば価値ある戦略をつくることができるのか? 本連載では、同書の内容をベースに坂田氏の書き下ろしの記事をお届けする。

ChatGPT以降「デキる管理職」が密かに捨てた3つの習慣Photo: Adobe Stock

“管理職のアップデート”が始まっている

 生成AIの登場により、「デキる管理職」と「そうではない管理職」の差は、これまで以上に目に見えて広がり始めています。

 海外の管理職と比較すると、日本の管理職は生成AIを活用している時間が短いという調査結果もあります。

 しかし一方で、日本でも、すでに生成AIを使いこなし、飛躍的な結果を出し始めている管理職が増えていることも事実です。

 いま静かに始まっているのは、“管理職のアップデート”です。

 あなたは、アフター生成AI時代に対応できていますか?

捨てた習慣① 長時間の「自力情報収集」

 どの時代においても、成果を出す管理職は情報に精通しています。新聞やウェブ記事、SNSなどからリアルタイムで情報を集め、新たな事業機会を探る姿勢は変わりません。

 しかし、生成AIを活用すれば、情報収集にかける時間を最小限に抑え、その分を戦略立案や意思決定など、より創造的な仕事に充てることができます。

 たとえば、新たな商談先の社長と会う際には、その社長の経歴や過去の発言、関連記事をリスト化し、生成AIに要約させることができます。

 そうすることで、相手の関心事や課題を深く理解した上で、的確な対話ができるようになります。

捨てた習慣② 「正解を教える」マネジメント

 生成AI時代には、「正解を知っている」ことの価値が著しく低下しています。

 なぜなら、世の中に存在する大半の「正解」は、いまや生成AIが提示してくれるからです。

 これからの時代に求められるのは「問いを立てる力」です。

 優れた管理職は、部下を指導する際に単に答えを教えるのではなく、部下の思考力を引き出す「問い返し」を実践しています

 たとえば、「なぜそう考えたのか?」「どうすればより良くなると思うか?」といった問いかけを通じて、部下が自ら考える力を養うことが重要です。

捨てた習慣③ 会議で「全部話す、全部決める」

 あなたの会社の会議では、長い説明や合意形成に、まだ多くの時間を取られていませんか?

 生成AIを活用して、会議前に議題の要点や論点、結論の候補を整理し、事前に参加者へ共有しておくことで、会議では本当に重要な意思決定だけに集中することができます。どれだけ多くの時間を会議に費やしても、当然ながら、実行されなければ成果にはつながりません。

 無駄な会議を減らし、実行のための時間に投資する

 それが、生成AI時代の管理職に求められる新しい習慣です。

『戦略のデザイン』では、戦略を成功に導く「管理職のあり方」を、具体的な事例とともに解説しています。

坂田幸樹(さかた・こうき)
IGPIグループ共同経営者、IGPIシンガポール取締役CEO、JBIC IG Partners取締役。早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)。ITストラテジスト。
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト・アンド・ヤング(現フォーティエンスコンサルティング)に入社。日本コカ・コーラを経て、創業期のリヴァンプ入社。アパレル企業、ファストフードチェーン、システム会社などへのハンズオン支援(事業計画立案・実行、M&A、資金調達など)に従事。
その後、支援先のシステム会社にリヴァンプから転籍して代表取締役に就任。
退任後、経営共創基盤(IGPI)に入社。2013年にIGPIシンガポールを立ち上げるためシンガポールに拠点を移す。現在は3拠点、8国籍のチームで日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。
単著に『戦略のデザイン ゼロから「勝ち筋」を導き出す10の問い』『超速で成果を出す アジャイル仕事術』、共著に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(共にダイヤモンド社)がある。