アベノミクスには
「第4の矢」があるはず!

田村:以前、経済団体の人たちと強烈な議論をしたことがあるんですが、彼らは市場の意味をよくわかっていない気がしましたね。乱暴に言ってしまえば、見栄とかお金を借りるための信用のためにあると思っている。

 でもそれは違うんです。「成長しなければ経営者は退出させられる」というプレッシャーを実感できる場所が市場です。企業のステイタスなんかのために、上場してはいけない。

 いい意味で健全な入れ替えが起こってくれたら、日本の市場には爆発的な隆盛が起こると思うんですけれどね。

藤野英人(ふじの・ひでと) レオス・キャピタルワークス取締役・最高投資責任者(CIO)1966年、富山県生まれ。1990年、早稲田大学卒業後、国内外の運用会社で活躍。特に中小型株および成長株の運用経験が長く、23年で延べ5000社、5500人以上の社長に取材し、抜群の成績をあげる。2003年に独立し、現会社を創業、成長する日本株を組み入れる「ひふみ投信」を運用し、ファンドマネジャーとして高パフォーマンスをあげ続けている。この「ひふみ投信」はR&Iが選定するファンド大賞2012の「最優秀ファンド賞」を受賞した。著書に『日経平均を捨てて、この日本株を買いなさい。』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金よりも大切にしていること』(星海社新書)ほか多数。明治大学講師、東証アカデミーフェローも務める。
ひふみ投信:http://www.rheos.jp/ Twitterアカウント:twitter@fu4

藤野:だから、それがアベノミクスの「第4の矢」なんじゃないでしょうか。コーポレートガバナンスこそが第4の矢であり、一番強力な武器。

 でもあからさまにそういうと大きな反発を受けてしまうから「財政、金融、成長戦略がアベノミクスの3本の矢だ」と言っていると思うんです。自民党のいまの幹部たちはそれをよくわかっていると思いますよ。「官邸はいつ第4の矢を抜くんだろうか?」と、密かに私は期待しています。

田村:以前、政府系の投資ファンドをつくろうとして、管(現官房長官)さんたちと一緒にこの議論で盛り上がりました。外国のよくわからないファンドがやるのなら反発もあるでしょう。でも年金のために国家がダメな経営者を市場から退出させるなら、国民は納得するんじゃないでしょうか。

 国家が投資ファンドを作って投資している会社には稼いでもらわないと、年金が回りませんからね。そのときは実現できませんでしたが、そろそろ実現できそうな雰囲気になってきた気がしています。

藤野:そのためにはまず、自民党が参議院選で勝利することが必須なんじゃないですかね。そうじゃないと、昔の自民党勢力が跋扈(ばっこ)することになりかねません。だからいまの官邸の人たちが強烈に勝って、「古い自民党」を黙らせることが重要なんじゃないかと私は思います。

田村:本当にいまの自民党には頑張ってほしいですね。日本はまだまだチャンスがあると思いますから。あとは市場が本来の姿を取り戻して、新陳代謝が起こるぐらいになればいいですね。ダメな経営者が交替させられて、次の世代の人間たちが経営者として活躍するようになって、藤野さんみたいな投資家がそれを応援していく。そこまでくれば、日本はもう間違いない。いまの日本経済に、アメリカも関心を持ち始めていますしね。

藤野:それはいい傾向ですね。

田村:ただ、彼らには「小泉政権のときも含めて、日本にはチャンスが何回もあったのに結局ガッカリさせられてきた」という思いも強くあるんです。それもあって投資にはまだ二の足を踏んではいるけれど、関心はかなり持っている。だから私は「今回がラストチャンスくらいのつもりで、やらなきゃいけませんよ」という話を関係者にはお伝えしています。

 ここをなんとか頑張れば、日本は「かわれる」と思いますよ。それは変化する「変われる」だけではなくて、世界から「買われる」ということでもあります。

藤野:そうなると市場もさらに盛り上がって、すぐれた力を持つ経営者たちを応援しやすくなりますね。