中国勢の台頭と米欧自動車メーカーの退潮
日産の立て直しは、中国の自動車、IT先端企業の動向を避けて通ることはできない。世界の自動車産業界は今、米GMやフォード、欧州のフォルクスワーゲンをはじめ、高級車ブランドのポルシェ、メルセデス・ベンツグループ、仏ルノーやステランティスの競争力低下が深刻だ。
共通するのは、自国市場でのEVシフトの鈍化と、中国の電動化加速への対応の遅れだ。米EV専業のテスラも中国勢との価格競争の激化や、トランプ関税で業績悪化の懸念が高まっている。
わが国の自動車業界は、中国事業の収益悪化に直面している。一方で、トヨタ自動車陣営は、米国のハイブリッド車ニーズをうまく取り込んだ。欧米勢と比較すると、全体としてわが国の自動車産業界は相応に健闘している。
その一方で、BYDなど中国の自動車メーカーが、政府の産業補助金や新エネルギー車への買い替え補助金政策を追い風に競争力を高めている。CATLをはじめとする車載用バッテリーメーカー、絶縁材メーカーも急成長している。IT先端企業をはじめ異業種からの参入も相次いでいる。
最近、上海汽車集団はファーウェイと組んで、新しい自動車ブランド「尚界」を立ち上げた。日産が中国の東風汽車と合弁で運営した工場は、東風子会社の嵐図汽車(英:VOYAH)のEV受託生産施設に転換された。
さらに中国勢は、米国との貿易戦争の影響が低そうなアジアやアフリカ、南米向け輸出を増やしている。海外直接投資も増やし、エンジン車から電動車、SDVまでを対象に、地産地消体制の確立に取り組んでいる。
他方、ドイツではフォルクスワーゲンが中国企業との協業を一段と重視し、国内事業のリストラで確保した資金を再配分してSDV開発体制を拡充しようとしている。
これまで自動車業界では、欧州、米国、わが国の主要企業が競争力を発揮してきた。しかし状況は大きく変化している。欧米勢はリストラを徹底して事業運営体制の立て直しに腐心する一方、中国の自動車関連企業が急成長しているのだ。