新社長エスピノーサ氏は「日産愛が強い」
2月13日、ホンダと日産の経営統合交渉は破談した後、ホンダは内田社長の退任を再協議の条件に定めた。日産内部では、内田氏の後任を誰にするか協議が進んだとみられる。
当初、次期社長候補には3人の名が挙がった。ジェレミー・パパン最高財務責任者(CFO)、欧州事業責任者のギョーム・カルティエ氏、そして商品企画責任者のエスピノーサ氏だ。いずれの候補も、(1)日産の車種ラインアップにハイブリッド車がないこと、(2)電動化への対応の遅れ、(3)米国や中国での競争力の低下に関して、多かれ少なかれ責任があったと考えられる。
そうした中で、エスピノーサ氏が次期社長に選ばれた。同氏については、取締役会議長である木村康氏の発言から人物評を少し知ることができる。木村氏は、候補者はそれぞれの持ち味、方法論を持っているが、このタイミングではエスピノーサ氏が最適との見解を示した。
木村氏は、エスピノーサ氏の「日産愛が強い」ことに言及した。エスピノーサ氏は、日産に愛着を持って、事業運営立て直しに向き合う人物だと見なされたのだろう。なお、一部報道によると、木村氏はホンダによる日産の子会社化に賛成だったようだ。
エスピノーサ氏はメキシコ出身で、メキシコ日産に入社した。2024年通年のグローバル生産実績によると、日産のメキシコ生産台数は66万9941台であり、国内(65万6990台)、米国(52万4919台)、中国(66万5437台)を上回っている。23年の実績では、最大の生産地は中国であり、国内が第2位、メキシコは第3位だった。
現在、トランプ政権は米国での製品製造を増やすため、自動車や関連部品に対する関税引き上げを明言している。今後の状況次第で、日産は米国で販売する車をメキシコで生産し、輸出することが難しくなる恐れはある。そうした状況が現実になると、日産の電動車やSDV開発体制は遅れ、資金繰りの懸念も一段と高まる。そのリスクを食い止めるため、日産の取締役会は北米市場に詳しいエスピノーサ氏を新社長に選んだと推測できる。