
シニア~高齢ゲーマーが増えている。
2021年の社会生活基本調査(総務省)によると「趣味・娯楽」として「スマートフォン、家庭用ゲーム機などによるゲーム」を嗜む65歳以上の高齢者は10%超で、60代では男女とも2割近い。
現50~60代の層は、子供時代にゲーセン(ゲームセンター)文化の洗礼を受け、家庭用ゲーム機の購入を巡って両親に苦い顔をされた経験を持つ世代だ。今後ますます高齢ゲーマー人口が増えることは想像に難くない。
高齢者に対するゲームの影響を調べた複数の研究からは、エクササイズ系ゲームは筋力や体力、歩行能力の改善に役立つほか、ゲームの種類にかかわらず、認知機能を維持する効果が確認されている。
その一方、ゲーム中に増えるだろう「座りっぱなし」時間のリスクや、孤立リスク、全般的な幸福感などとの関連は不明だった。
そこで、千葉大学の研究者らは、日本老年学的評価研究に参加した要介護認定されていない65歳以上の1243人(平均年齢75.7歳、女性626人)について、デジタルゲームの利用状況と健康や幸福感、社会的充実感などのいわゆるウェルビーイングとの関連を評価した。
調査対象のうち、デジタルゲームを定期的に利用していたのは、15.6%にあたる192人(女性84人)で、その特徴は比較的若い男性、高学歴、家族・配偶者と同居、就労者などだった。
ウェルビーイングとの関連では、高齢ゲーマーは非ゲーマーと比べ、趣味のグループへの参加率と友人に会う頻度が有意に高かった。また懸念された「座りっぱなし」の弊害は認められなかった。
研究者は「デジタルゲームは高齢者が仲間と交流する機会を増やし、社会的な幸福の充実に役立つだろう」としている。
実際、ここ数年はeスポーツをレクリエーションに取り入れる介護施設が増えている。
近い将来には、高齢者向けのソーシャルゲームの開発や、地域のコミュニティーセンターに「ゲーセン」を常設する動きが加速する、かもしれない。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)