「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

「脳を鍛えるには運動しかない」というわけでもない…<br />91歳の医師が教える“好きなことして”ボケない方法Photo: Adobe Stock

「脳トレ」で脳の血流を促進する

【前回】からの続き 身体を動かすばかりが、運動ではありません。脳を鍛える「脳トレ」という言葉があります。脳トレという言葉がなかった時代には、「頭の体操」といったものです。

体操をしたり立ち上がって歩き回ったりすると、脳の血流が促進されるように、脳を使って「頭の体操」をすると、脳の血流が促されるようになります。必要に迫られて、脳を流れる血液の量が増えてくるのです。

「脳トレ」は、東北大学加齢医学研究所の川島隆太所長などの発信により、2004年頃に一大ブームを巻き起こしました。川島先生は、単純な「読み」「書き」「計算」などの継続的な反復学習により、脳を活性化させる学習療法を提唱しています。その研究の手法や脳トレの具体的なメソッドには批判もあるようですが、私自身は大筋で川島先生の提案は間違っていないと思っています。

脳トレは「継続できるかどうか」がポイント

名作の音読、写経、暗算……。脳トレには、いろいろな方法があります。どれを選んでもいいのですが、いずれにしても「続けられるかどうか」がポイントです。「ローマは一日にしてならず」という諺ことわざがありますが、私流にアレンジしていわせてもらうなら、「脳活性は一日にしてならず」なのです。

脳を刺激して血流量を増やせたとしても、それが三日坊主に終わってしまったら、効果は一時的なものにとどまってしまいます。仮に、脳の血流量をどっと増やす方法を週1回だけ続けた人と、脳の血流量を少しだけ増やす方法を毎日続けた人を比べると、どちらが認知症を予防する効果が高いでしょうか?

そうした研究はまだないようですが、個人的な見解を書かせてもらうと、後者のほうが有利だと私は思っています。血流量をアップさせる効果はほどほどだとしても、日々の生活で継続すれば、脳トレの効果は高まると考えられるからです。

まずは「好きなこと」をやってみる

好きで続けられるなら、数独、クロスワードパズル、ジグソーパズル、塗り絵など、なんでも効果的。囲碁や将棋、麻雀といったボードゲーム&テーブルゲームもいいですね。スマホや家庭用ゲーム機のゲームで遊ぶのもいいでしょう。

何が続けられるかには、性格やライフスタイルなどによって個人差が大きいものです。計算や数字が好きな人なら、暗算ドリルや数独などが続けやすいでしょうし、文字を書くのが好きなら写経をしたり、新聞のコラムを書き写したりするほうが続けやすいでしょう。

日々の食事や行動、考えたことなどを日記に書き綴るのもいいですし、オリジナルの小説やエッセイにチャレンジするのもいいと思います。クイズが好きならクロスワードパズルもいいでしょうし、同好の士がいるならボードゲームやテーブルゲームが続けやすいでしょう。

ストレスをためない程度に競い合う

好敵手と勝ち負けを競っていると、脳がフル回転して血流も活発になるはずです(勝ち負けにこだわりすぎてストレスが増えると、認知症のリスクになりますから、のめり込みすぎない程度に楽しむことも大切です)。

何が続けやすいかは十人十色で、万人にフィットする脳トレは存在しません。何が自分に合うかは、やってみないとわかりませんから、いろいろと試してみて、「面白い、これなら続けられそうだ!」と思えるものを見つけましょう。そうして試行錯誤すること自体も、認知症予防に有効です。

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。本書には、脳が若返るメソッドがたくさん掲載されています。ぜひチェックしてみてください!