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大学全入時代に入り、浪人回避で志望順位の低い大学に入学したり、「仮面浪人」や「合格浪人」を選んだりする受験生が近年、増えている。しかし、浪人したところで偏差値がどれだけ伸びるのか分からず、さらに1年間、受験勉強をするべきか悩む受験生(と、その親)は多いはず。そこで、連載『教育・受験 最前線』では、大手予備校、駿台予備学校の内部データに基づく1浪後の偏差値の平均的な上昇値を公開。さらに、その偏差値の上昇値から合格が見込めるようになる大学の卒業者の年収データを併せて分析することで、浪人の“コスパ”を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)
「大学全入時代」に入り
「仮面浪人」と「合格浪人」が増加
世は大学全入時代――。今の大学受験生の親世代が大学生だった頃は、1~2浪を経て入学した学生がキャンパスにゴロゴロいたはず。しかし現在は、少子化と大学の数自体が増えたことなどから、大学名さえ選ばなければほぼ誰でも現役入学できるようになった。そうした中で増えているのが、「行きたい大学ではなく、行ける大学に入る」という、いわば妥協による大学選びだ。
1月17~18日に実施された2026年度の大学入学共通テストの総志願者数は、49万6237人で前年度比0.2%増(1066人増)と増加したが、注目すべきはその理由だ。
現役生の志願者数は、26年度の共通テストからウェブ出願が解禁されたことなどにより、前年度比98.7%(5657人減)している。つまり志願者数を押し上げた理由は浪人生(既卒生)、それも「2浪生」の志願者数が大幅に増えたことにある。その数は1万2516人。前年度比でなんと同145.0%(3883人増)に達した。片や「1浪生」のそれは4万5856人で同104.3%(1900人増)である。
結果、大学入試センター試験時代を含めて19年度から右肩下がりだった浪人生の割合は26年度、大幅な上昇に転じた(下図参照)。
なぜ浪人生、とりわけ2浪生の志願者数が爆増したのか。
「2浪の志願者のこれほどの増加は模試の受験者動向にも表れておらず想定外だった」と、大手予備校、駿台予備学校の城田高士入試情報室室長は言う。
城田氏は「駿台予備学校では例年に比べて2浪の受講生が増えていないことから、今回の2浪の志願者の多くは『仮面浪人』(大学に通いながら別の大学を受験する受験生)である可能性が高い。2浪の志願者は『旧課程』の最終学年に当たり、現役時は『新課程』に移行する翌25年度の共通テストへの不安から不本意な進学をした受験生が多かったと思われる。浪人回避で第1志望ではない大学に入学したものの満足できず、再挑戦に踏み切ったことが最大の要因だろう」と分析する。
また、大手予備校、河合塾では近年、仮面浪人を含む「合格浪人」(現役時に合格した大学がある浪人)の受講生の割合が高まり、25年度は過去最高を記録したという(『大学入学共通テストで2浪生爆増、河合塾では「合格浪人」比率が過去最高に!親の古い受験イメージが子どものチャレンジ精神の足かせに?』参照)。
仮面浪人にせよ、合格浪人にせよ、行ける大学があるにもかかわらず浪人を選択する受験生が増えているということは、不本意に入学した大学へしぶしぶ通い続けている学生も増えているであろうことは想像に難くない。
確かに18歳という人生のゴールデンタイムを、つらい受験勉強に費やしたくないのは当たり前。ましてや現役進学が当たり前の時代に、キャンパスライフを謳歌する高校時代の級友たちを見ながら、あえて浪人してまで受かるかどうかも分からない第1志望校に再チャレンジすることにちゅうちょするだろう。
しかしながら、「希望していなかった大学にしぶしぶ通うくらいなら」というただし書き付きで、浪人することで現役時と比べてどのような大学に合格できる可能性が広がり、その結果、大学卒業後の長い人生がどう変わり得るのか、という「浪人のコスパ」を十分検討してから決めてもよいはずだ。
そこで次ページでは、まず1浪によって学力(偏差値)の上昇がどれほど見込めるのかを知るべく、駿台全国模試の内部データに基づく主要5教科の各教科や文系・理系3教科の1浪後の偏差値の平均上昇値を一挙公開。さらに、その偏差値の上昇値からチャレンジできる大学の名前がどれほど変わるのかを明らかにする。その上で、現役時の学力相応校と1浪後の学力相応校、それぞれの大学出身者の平均年収と生涯賃金から、浪人の“コスパ”を分析する。
浪人によるメリットとデメリットをてんびんに掛け、もう1年頑張るべきか否かの判断材料にしてほしい。








