そして、その波を経験しながら何度も失敗を乗り越えていくと、少しずつ“心の基礎体力”がついてくるのです。
子どもたちにとっては、成功した喜びと同じくらい失敗して落ち込むという経験も大切です。さらに肝心なのは、失敗した後で「じゃあどうするか」というのを考えること。周りの大人が、気持ちを切り替えられるような導きや声掛けをしてあげることも必要でしょう。
また、野球などの団体競技の場合は仲間と一緒に励まし合ったり、あるいはその仲間と自分を比較することで気持ちを高めることもできます。逆に学校の勉強などで求められるのは、基本的には自分が目の前のことに集中して取り組むかどうかだけ。勉強している最中に失敗があっても、その場でそれを乗り越えるという経験はできません。
ただし、圧倒的な挫折感を味わってしまうと、子どもたちは嫌になって辞めたくなってしまいます。
極端な例ですが、まだ小さな1年生の子をいきなり6年生の試合に出してしまえば、飛び交うボールも人の動きも速すぎてついていけず、「ボールが怖い」「つまらない」ということになってしまいます。あるいはミスなどを周りが最初から責め立てると、怒られたというトラウマから常に「失敗したくない」とマイナス思考に陥ってしまいます。
心を鍛えて基礎体力をつけるというのは、決して厳しい環境に入れたり、子どもにプレッシャーをかけて強く育てるということではありません。
私は落ち込みそうになっても、何の根拠もなく「結局は全部上手いこと成功するんだよな」という思考になるのですが、子どもたちにもそうやって前向きに考えられるような心を持たせたいと思っています。
子どもが最も楽しいと思うのは「成功したとき」
だからこそ、特に未就学児を対象にした野球教室や初心者の体験入部といった導入の段階では、まずはとにかく成功体験を積ませることからスタートしています。
ボールを捕ることから始め、最初はこちらからグラブにボールを入れてあげながら「捕れた」という成功体験を味わってもらう。もちろん捕ることができないときもあるのですが、そこは全部スルー。できるだけ1球ずつの間を縮めてリズムよくポンポンと進め、失敗を失敗だと感じさせないようにしています。