
前回、今年の減税は過去イチ複雑な仕組みになっており、一方で減税額は“ガッカリ”な内容であることを解説した。今回は、年金収入で暮らす人に減税の影響がどう出るのかを見ていこう。減税も踏まえ、「年金の手取り額」を試算した結果、衝撃の事実が判明した。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)
「基礎控除の拡大」で
年金生活者の減税額はどうなる?
前回の当コラムでは『「えっ…散々モメたのに減税額これだけ?」過去イチ複雑な今年の減税、“徹底解剖”したらガッカリなワケ』と題して、政治家バトルの末に決定した今年の減税政策を解説した。タイトル通り、ガッカリするような減税額になる模様だ。
実施される減税の仕組みを解説しつつ、給与収入の人の減税額を年収別に試算したものを公開したところ、読者から「年金収入の減税額も知りたい」とリクエストがあった。確かに他のメディアでも「給与収入版」のケースばかりで、「年金収入版」は見かけない。
そこで今回は「年金収入の減税効果」を取り上げる。そして、毎年恒例の「今年の年金の手取り額試算16パターン」の一覧表も公開しよう。
2025年実施の減税措置は、所得税の「基礎控除」の拡大だ。給与収入の人は、これに加えて給与所得控除の最低額が10万円拡大するが、年金収入の場合、給与所得控除にあたる公的年金等控除の拡大はない。
改正前の基礎控除は、48万円。昨年末の税制改正案で10万円拡大し58万円になることが決まっていた。控除拡大は、所得税のみで住民税はない。
国民民主党はこの程度の減税は不満とし、年が明けて引き続き与野党協議が行われた。結果、3月4日に「基礎控除の特例創設」という与党の修正案が衆議院で可決。基礎控除48万円が58万円になることはそのままで、所得の低い人には基礎控除が加算されることになった。
修正案の「基礎控除の特例創設」について、年金収入で暮らす60代後半の人の例で見てみよう。年末に決まった基礎控除58万円(現行の48万円+10万円)に加算される控除額は次の通りだ。