石黒氏が予想する日経平均の下値めどは、昨年8月5日の「令和のブラックマンデー」につけた3万1458円。その近辺で底打ちした後、ボックス相場を形成して、年後半から再び上昇に転じるシナリオを想定するが、パニック時にはPBR1倍まで売られることも多いので、その場合は2万7000円まで下げる可能性もあるという。
「今回のトランプ氏は、第一次政権時代と逆の手法を取っています。前回は、最初に大規模な減税を行い、中間選挙が実施された2018年から対中関税の引き上げを行ったため、その後の混乱に対する政策対策余地が乏しくなってしまいました。一方、今回は最初に相互関税を導入し、関税収入を原資にして大規模減税を行う予定です。大統領上級顧問のナバロ氏によれば、その収入は6兆ドル以上。減税策によって景気を浮揚させ、26年の中間選挙に臨むというシナリオでしょう。今回は18年当時よりも政策金利が高い水準にあるため、利下げの余地も大きい。前回と異なり、トランプ氏の手元にはお金と金利の2つの“武器”があるわけです」(石黒氏)
関税は単年度の影響
つまり、大きく調整した株価も、来年の中間選挙に向けて戻す可能性があるのだ。
「FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長は3月時点では、関税の影響は『一過性』と表現していました。それが、4月4日の講演では景気の下振れリスクとインフレ再加速のリスクに言及して警戒感を強めたので、市場の失望売りを誘ったのですが、本来、関税は単年度の影響にとどまるもの。毎年引き上げられるものではなく、関税によるインフレ圧力は長期化しにくい点は考慮するべきでしょう」(同)
市場では、インフレと景気後退が同時進行するスタグフレーションを危惧する声も高まっているが……。“トランプ劇場”に踊らされ、リスクに過敏になりすぎると勝機を逃すことになりかねないと言えそうだ。
(ジャーナリスト・田茂井治)
※AERA DIGITALより転載