
長時間労働で会社に尽くすことを美徳としてきた日本のサラリーマン。しかし「週5日出社できることだけが取り柄」の社員のままでは、定年後に行き場を失ってしまうことになる。定年直前にしてJAXAを自ら退職した宇宙飛行士・野口聡一氏が、充実したセカンドキャリアの築き方を解説する。※本稿は、野口聡一『宇宙飛行士・野口聡一の着陸哲学に学ぶ 50歳からはじめる定年前退職』(主婦の友社)の一部を抜粋・編集したものです。
諸悪の根源「長時間労働」を
なくせない背景にあるもの
長時間労働がいかに諸悪の根源になっているか。
長時間労働とワンセットで議論されるのが労働生産性です。これは、働いて得た成果物を分子に置き、労働時間を分母に置いて計算すると、はじき出せます。
この分数計算に従えば、分母の労働時間を減らすだけで、労働生産性は上がります。分子の成果物を増やす必要はないのです。
では、なぜ、そんな単純なことができないのか。
労働時間を減らせないのは、残業代がないと生活が苦しい事情が確かにあります。ですが、もう1つ、働き手のマインドの問題があります。
会社から「あなたは会社に貢献できますか」と問われたら、「何時間でも働けます」と答える中高年、意外と多くありませんか。「早出もできます」「夜間も働けます」みたいなことを胸張って言う方々。
ここが、長時間労働をなくせないもう1つのポイントなんです。成果物の出来栄えなど度外視して、ただただ会社に滞在時間を提供することが、組織に対する忠誠心の証だと思っている。