でも、それって、本当に会社が必要としているスキルなのでしょうか?
企業とは本来、利益を上げる機能集団です。一番の貢献は、利益を上げること。
利益が上がらないのに、社内会議や稟議書の類いを増やし、社内滞在時間を増やす。それでいて、やっていることといえば、自分の部署に忠誠を尽くすためと言って、隣の部署の足を引っ張るみたいな本末転倒が起きている。このことは、ギャラップ社の調査データを紹介しながらすでに触れたところです。
なるほど、定年までは、会社があなたに会社への貢献度についてさほど問うことはないかもしれません。
日本人の勤勉さの原点は
「労働神事説」にあり
しかし、60歳定年を過ぎた途端、「定年後もこの会社に貢献できるスキルはありますか」と聞かれるんです。
そのとき、ほとんどの方は、「週5日出社できます。それは私の取り柄です」と答えるしかない。これでは、定年延長で65歳まで雇用義務があるとしても、そこから先、会社に居られる理由はなくなってしまうのです。
本来なら、会社は定年になるずっと前に「あなたのスキルはなんですか」と聞かないといけなかったんですよね。ダメになるばかりなのですから。
働き方改革が一筋縄ではいかないのは、労働に対する日本人の価値観と切っても切り離せない事情があるからだと思っています。
日本はいわゆる農耕文化ですので、1カ所で毎年同じように繰り返し労働することが好まれ、いわば美徳でもある。会社勤めの場合も、定年まで、あるいは定年後も同じ場所でずっと反復して勤め上げることが尊敬の対象になります。
日本人の労働観は労働神事説に基づいているといわれます。労働によって神に仕えるという意味。これは、稲作に由来していて、神の委託を受けて稲を作り、収穫物を奉納するという古代から続く考え方です。