新年度を迎えて1ヶ月が経ち、この春に社会人になった人や、新しい仕事を始めた人のなかには、慣れてきたと感じる人もいれば、「うまくいかないな」と悩んでいる人もいるのでは。仕事の人付き合いにおける「信頼されるコツ」をまとめた書籍『記憶に残る人になる』の著者である福島さんも、かつて同じ経験をしました。世界的ホテルチェーンのザ・リッツ・カールトンを経て、31歳でカード会社の営業になるも、当初は成績最下位に。今となって振り返ると、いくつもの「勘違い」をしていたそうです。
そこでこの記事では、福島さんに、新社会人や若手社会人がやりがちな「失敗」や「勘違い行動」についてお話しいただきました(ダイヤモンド社書籍編集局)。

丁寧なように思える「気になる敬語」たち
若手社員がやりがちな「失敗」のひとつに、「丁寧すぎる敬語を意識しすぎる」というのがあります。僕はこれを“丁寧風・意味不明話法”と呼んでます。
たとえば、「~でございます」とか「よろしかったでしょうか」とか。
丁寧に思えますが、言葉としては違和感がありますし、かしこまりすぎて気持ちが伝わらない。しかも、意味も曖昧になっていきます。
超人気ソムリエの「驚きの言葉づかい」
僕が22歳くらいの頃にアルバイトしていた高級感のあるフレンチレストランが、言葉づかいにものすごく厳しいお店でした。何を言うのも「ございます」を徹底してつけろと。
でも、だんだん接客が楽しくなくなっていきました……。
そんなときに、たまたま別の人気レストランで短期アルバイトをする機会がありました。
そこのソムリエの方はコンクールで優勝するようなすごい人だったので、「きっと完璧な敬語を使ってるんだろうな」と思って横で聞いてたら、まさかの「~っすねー」「マジすかー」と、もう完全にフランク。
でも、お客さんがめちゃくちゃ楽しそうだったんです。
そのとき、ハッと気づきました。僕は丁寧な言葉づかいを気にするあまり、自分の感情が抜け落ちてしまっていたと。
「ちゃんとしなきゃ」と思えば思うほど、気持ちが伝わらなくなっていたんです。
カードの解約を思いとどまらせた「ある言葉」
大事なのは言葉づかいではなく、そこに込めた「気持ち」です。これは自分がお客様の立場としても、よく実感しています。
最近、クレジットカードを何枚か整理しようと思って、いくつかの会社に解約の電話をかけました。
どのオペレーターさんも言葉づかいは丁寧なんですが、なんだかすごく冷たく感じました。丁寧すぎる言葉が、僕と相手を隔てる「壁」のように感じたというか……。
でも、あるカード会社のオペレーターさんだけは違いました。
「今日は雨ですね」「気をつけてお出かけくださいね」と、言葉は丁寧なんだけど、とてもフレンドリーだったんです。僕はその言葉に心をつかまれてしまって、結局「やっぱりこのカード、解約やめます」って言ってしまいました。
「気持ちが伝わる言葉」こそ、本当に丁寧な言葉
たまに、丁寧な言葉を使っている“自分”が好きな人もいますよね。どこかキリッとしてて、冷静で、上品な自分を演じているような。
でもそれって、じつは“自分本位”なんじゃないかと思うこともあります。
大事なのは「言葉が丁寧かどうか」じゃなくて、「相手を敬う気持ちがあるかどうか」、そして「その気持ちが伝わるかどうか」なんだと思います。
先ほどのカード会社のオペレーターの方も、いわゆる「丁寧な敬語」ではなかったけど、気持ちはちゃんと伝わってきました。だからこそ僕の心に響いたんです。
僕もたまに「福島さんって丁寧ですね」と言ってもらえることがありますが、むしろ、丁寧な言葉を使いすぎないように気をつけているくらいです。
相手を敬う気持ちが伝わる言葉というのが、本当の意味での「敬語」だと思います。
だからこそ、マニュアル的な敬語ではなく、“伝わる言葉”を自分で選べる人間でありたいなと思うんです。
(本稿は、書籍『記憶に残る人になる』の著者・福島靖さんへのインタビュー記事です。)

「福島靖事務所」代表
経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。居酒屋店員やバーテンダーなどを経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。お客様の記憶に残ることを目指し、1年で紹介数が激増。社内表彰されるほどの成績となり、全営業の上位5%にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。40歳で独立。『記憶に残る人になる』が初の著書。