プレゼン資料は、「読ませるもの」ではありません。“込み入った話”を言葉だけで伝えようとすると、どうしてもまどろっこしい表現になり、非常にわかりにくい説明になりがちです。そんな時に必要なのは、伝えるべき内容の「本質」を、直観的に理解できるように「図解化」する技術。プレゼン資料は「見せるもの」なのです。そこで、累計40万部を突破した『社内プレゼンの資料作成術』シリーズの著者で、ソフトバンク在籍時には孫正義社長に直接プレゼンをして「一発OK」を次々と勝ち取った実績を持つ前田鎌利さんと堀口友恵さんに、プレゼン資料を「図解化」する技術を伝授していただきます(本連載は『プレゼン資料の図解化大全』から抜粋・編集してお届けします)。

1枚のスライドで「3色まで」が基本
「図解スライド」において、カラーをいかに使うかは大切なポイントです。
【図-1】の①のように黒一色にするよりも、②のように「強調したい部分」のフォントを太くしたうえで、カラーリングをするほうが、「何が言いたい図解」なのかが明らかに伝わりやすくなります。

ただし、この効果を最大化するためには、あまりにも多くの色数を使わないことが大切です。色数が多いと、逆に「何を伝えたいのか」がわかりにくくなるうえに、目がチカチカして“見る気”が失せてしまうからです。
ですから、スライドの色数は絞って、「ここがポイント!」という部分だけをカラーにするのが基本です。もちろん、色数を増やさざるをえないスライドもありますが、そのような場合でも、できるだけ3色を上限にするようにしてください。
色数を増やすときには「同系色」を使う
とはいえ、3色だけでは表現しきれないこともあります。
たとえば、【図-2】のようなケースです。新入社員研修などで業務上必須のソフトについて説明する場合、それぞれのソフトを象徴するカラーを使うと効果的ですが、このような場合には、ご覧のように、「赤」「緑」「青」の3色とそれぞれの同系色を使うことで、合計6色でありながらスッキリと視認性の高いスライドにすることができます。

なお、補色はなるべく使わないほうがよいでしょう。
補色とは、「黄色-青紫」「緑-赤紫」「赤-青緑」など、コントラストの強い配色のことで、補色を使うことで、双方の色を目立たせる効果があるとされています。
しかし、色の組み合わせによっては、ハレーションが起こったり、目がチカチカして見づらくなることがありますので、プレゼン資料ではなるべく使用を避けたほうが無難です。信号などのように、注意喚起をするために補色を使うのは極めて有効ですが、プレゼン資料にはあまりそぐわないと私たちは考えています。
「青」と「赤」を使い分ける
カラーを使うことには、もうひとつ意味があります。
「売上増」「経費削減」などポジティブなメッセージは「青」、「売上減」「経費増」などネガティブなメッセージは「赤」に統一することで、わかりやすいプレゼンにすることができるのです(図-3)。

なぜなら、スライドを見た瞬間に、決裁者に「いい情報なのか?」「悪い情報なのか?」を知らせることができるからです。要するに、「話がはやい」のです。
〈カラーの法則〉
●ポジティブ・メッセージは「青」
●ネガティブ・メッセージは「赤」
世界中の信号が「青=進め」「赤=止まれ」で統一されているように、「青」は「良好、順調、安全」のシグナルであり、「赤」は「不良、不安、危険」のシグナルとして使われています。
そのため、このルールに従ってスライドをつくれば、見る人は無意識的にスライドの意図を読み取ってくれるのです。
ただし、自国のカントリーカラーが「赤」であるなど、「赤」がポジティブと認識している国や、自社のコーポレート・カラーが「赤」の場合などは、この限りではありません。プレゼンする相手の国や企業にあわせて、カラーリングは適宜調整することが大切です。
もう一点、【図-3】にはテクニックが盛り込まれています。
それは、「ワンカラー効果」です。ご覧の通り、【図-3】のグラフでは、「青」や「赤」で強調している棒グラフ以外は、すべてグレーアウトしています。こうすることによって、「青」や「赤」のワンカラーをさらに強調する効果を生み出しているわけです。
これは、インパクトのある「図解スライド」をつくるのに、非常に効果的な手法ですので、ぜひマスターしてください。
(本稿は、『プレゼン資料の図解化大全』より一部を抜粋・編集したものです)
1973年生まれ。ソフトバンクモバイルなどで17年にわたり移動体通信事業に従事。ソフトバンクアカデミア第一期生に選考され、プレゼンテーションにおいて第一位を獲得する。孫正義社長に直接プレゼンして幾多の事業提案を承認されたほか、孫社長のプレゼン資料づくりも数多く担当。2013年12月にソフトバンクを退社、株式会社固を設立して、プレゼンテーションクリエイターとして独立。2000社を超える企業で、プレゼンテーション研修やコンサルティングを実施。ビジネス・プレゼンの第一人者として活躍中。著書に『【完全版】社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』『パワーポイント最速仕事術』(すべてダイヤモンド社)など。
堀口友恵(ほりぐち・ともえ)
埼玉県秩父市生まれ。立命館大学産業社会学部卒業後、ソフトバンクへ入社。技術企画、営業推進、新規事業展開などを担当する中で、プレゼンの経験と実績を積む。2017年に株式会社固へ転職し、スライドデザイナーとしての活動を始める。企業向け研修・ワークショップの担当や大学非常勤講師のほか、大手企業などのプレゼンのスライドデザインを担当し、のべ400件以上の資料作成やブラッシュアップを手がける。前田鎌利著の『プレゼン資料のデザイン図鑑』『パワーポイント最速仕事術』のコンテンツやスライドの制作にも深く関わった。ITエンジニア本大賞2020プレゼン大会にて、ビジネス書部門大賞・審査員特別賞を受賞。小学生向けのオンライン講座「こどもプレゼン教室」を運営し、子どもたちのプレゼンスキルアップの支援も行っている。