「中学生の子どもが不登校です。なんとか大学まで行かせてあげたいですが、そんなの難しいですよね…」
新刊『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』は、東大・京大・早慶・旧帝大・GMARCHへ推薦入試で進学した学生の志望理由書1万件以上を分析し、合格者に共通する“子どもを伸ばす10の力”を明らかにした一冊です。「勉強が苦手だったり、勉強をしたくない子どもにもチャンスがある」こう語る著者は、推薦入試専門塾リザプロ代表の孫辰洋氏で、推薦入試に特化した教育メディア「未来図」の運営も行っています。今回は、不登校の子どもの進路について解説します。
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不登校と進学の不安
最近は不登校の子どもが増えています。近年、不登校の子どもは増加傾向にあります。文部科学省の調査によると、小中学校の不登校の児童・生徒数は約35万人と過去最多を更新したとのこと。
私の元にも保護者や本人からこんな相談が寄せられることがあります。
「中学生の子どもが不登校です。なんとか大学まで行かせてあげたいですが、そんなの難しいですよね…」
確かに、日本の教育システムでは学校に通うことが前提とされる場面が多く、不登校になると「進学は諦めるしかないのでは」と思ってしまう気持ちはよく分かります。ですが、実際には不登校から大学合格を果たすケースは珍しいことではありません。
今回は、その一例として「不登校から上智大学に合格したケース」をご紹介します。
不登校から上智大学に合格した男子生徒
野村さん(仮名)は、小学校の頃から勉強が苦手で、算数の文章題は問題文の意味すら理解できず、授業についていくことができませんでした。テストではいつも平均点を大きく下回り、友達にからかわれることも多く、学校に行くこと自体が次第に苦痛になっていきました。
中学に入ると状況はさらに悪化。授業内容は難しくなり、提出物も遅れ、友達との会話も噛み合わなくなります。そんな環境の中で学校へ行けなくなり、不登校に。自分でも「努力不足なのでは」と悩みましたが、同時に「なぜ自分に合った学び方がないのか」と考えるようになりました。
やがて教育そのものに関心を持ち、「教育を学びたい」という思いを抱いた野村さん。高校に進学してからは、上智大学教育学科を目指すことを決意します。一般入試は難しいと判断し、推薦入試での挑戦に方向転換。授業や定期テストに真剣に取り組み評定を確保しつつ、教育関連の課外活動にも積極的に参加しました。
面接では、不登校を経験したからこそ抱いた「誰もが自分に合った学びを得られる教育をつくりたい」という志望理由を熱意を込めて伝えました。その結果、見事に上智大学人間総合科学部教育学科への合格を果たしたのです。
不登校の経験はマイナスではない
大学の推薦入試では、逆境を乗り越える力や回復力(レジリエンス)と呼ばれる非認知能力が高く評価される場合があります。多くの大学が求めているのは、単なる「偏差値の高さ」でも、「学校に行けているかどうか」というようなポイントではなく、「挫折を経験しながらもそこから立ち直り、学びに向かう姿勢」だと言えます。
だからこそ、不登校経験があること自体はマイナスではありません。むしろ「そこからどう立ち直ったのか」「その経験を通じて何を学び、どう社会に還元したいのか」をしっかり伝えることができれば、合格への大きなアピールポイントになります。
「不登校だから行きたい学校を受験するのは無理だ」と思う必要はありません。野村さんのように、不登校を経験したからこそ得られた視点や学びを強みに変えることができます。
大切なのは、諦めずに挑戦し続けること。教育の現場は変わりつつあり、大学もまた多様な経験を持つ学生を求めています。
不登校という経験も、生徒自身の物語の一部として評価される時代になっているのです。
(この記事は『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』を元に作成したオリジナル記事です)




