相互関税で投資家の「米国資産」離れ
トランプ政権の朝令暮改がいかに金融市場に影響を及ぼしているか。改めて時系列でおさらいしよう。4月2日、トランプ大統領は10%の基礎部分と、国ごとの上乗せ関税から成る相互関税を発表した。5日、原則として全ての貿易相手国を対象に、基礎関税部分を実行した。続いて9日、同氏は上乗せ部分も発動した。
この間、米国の金融市場では、過去にあまり見られなかった変化が起きた。米金利、特に長期の金利が上昇したのだ。相互関税の発表直後、米国株は大幅に下落。4月3日から8日まで4営業日連続で、ニューヨークダウ工業株30種平均株価は下がり、月初来の下落率は10%を超えた。
急速なリスクオフ(投資家がリスク資産の保有を減らすこと)に突き動かされて、米金利が低下した場面も。7日、米長期金利は3.8%台半ばまで低下した。その後、株価はトランプ氏の発言に振り回されて乱高下した。
外国為替市場では、ドルが円やユーロに対して軟調に推移した。米国の低格付けの社債価格は下落基調だった。わが国では一時、社債の取引が難しくなるほどリスク回避に動く投資家が増えた。4月11日の取引終了時点、トランプ関税で米国の景気は後退し、物価上昇が再燃するとの懸念から、世界の金融市場はリスクオフのムードだった。
7日以降、米長期金利は上昇した。9日に相互関税の国別の上乗せ部分が発動された直後も、米長期金利は低下しなかった。金融政策に対する予想を反映しやすい短・中期の金利にも上昇圧力がかかった。
中長期的なリスクを反映する傾向が強い、20年や30年の超長期ゾーンの金利上昇幅はさらに拡大した。一部の投資家は、米国の経済運営が難しくなり、連邦財政の信用力が低下する展開を警戒し始めたようだ。
リスクオフ局面での米長期金利の上昇は、米国売りを如実に示した。このことが、トランプ氏が相互関税の90日延期を決める重要なきっかけになったはずだ。