米中のチキンレースは続く
ただ、だからといってトランプ政策が安定志向になるかは分からない。中国側は毛沢東時代の「徹底抗戦」演説動画を持ち出して、米国の圧力に対抗する姿勢を示している。
中国サイドも、本心では早期に貿易戦争の落としどころを見いだしたいはずだ。しかし、綱紀粛正を徹底し思想教育にまで踏み込む習主席が、米国に譲歩を示すことはないだろう。
米国も中国も当面の間、殴り合いを繰り広げる可能性が高い。米中のチキンレースは続きそうだ。それは、大手投資家のリスク許容度がさらに低下することにつながる。
また、トランプ氏の関税政策は、米国が重視してきたグローバル化をひっくり返す行為だ。第2次世界大戦後の国際秩序は大きな転換点を迎えている。
そうした変化に備える国や地域、企業は増加している。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、関税交渉決裂なら米IT大手企業に課税する方針を示唆。トランプ政権は、米国の同盟国を中国に接近させてしまうとの見方もある。
多国籍企業は、サプライチェーンの再編にコミットし始めている。今、相対的に関税率が低い国に、製造や輸出の拠点を設けようとする企業が急増しているという。ただし、再編にはコストがかかる上、トランプ関税に対応するため世界全体で需給バランスがゆがむ事態に陥っている。
米国では政府効率化省(DOGE)を率いるイーロン・マスク氏が、連邦職員を解雇したことで人員解雇件数が増加し始めている。今後はコストカットのため、リストラを実行する米企業が増えるだろう。米国での製造業回帰は一筋縄には進まないはずだ。
米国はトランプ政権下、景気低迷とインフレ再燃のリスクを抱えている。トランプ氏が自身の政策の危うさを理解するためには、さらに米国の株式や為替、債券の価格が下落することが必要になるかもしれない。
※下記は「トランプ相互関税」の一覧(4月9日時点)