
ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2025の「世界株部門」で最優秀賞を受賞した投資信託が、「野村未来トレンド発見ファンドBコース(為替ヘッジなし)[愛称:先見の明]」(野村アセットマネジメント)だ。中長期で成長が期待できる複数のテーマ(例:新技術、人口ボーナスなど)を設定して投資していて、時代のトレンドに合わせて、各テーマの投資比率が変わる独特の運用スタイルが特徴だ。柔軟な運用により、どんな市場環境でも安定して成績上位を維持している。好成績キープの秘訣を、運用担当者の斎藤芳暁さんに聞いた。(ダイヤモンド・ザイ編集部)
スポーツカーのフェラーリの運用比較対象が
高級ファッションのエルメス!?
――最大の特徴は、複数の投資テーマを設定し、相場動向に合わせて組み入れ比率を変える柔軟な運用スタイルです。

斎藤 はい。私たちの投資テーマは大きく、「高成長テーマ」と「安定成長テーマ」の2つに分けられます。
高成長テーマは、「新技術」「AI/ビッグデータ」など。革新的な技術や新商品が登場し株価が大きく上昇する時期と、期待値が高まりすぎて株価が反動する時期を繰り返しながら成長するタイプのテーマです。
一方の安定成長テーマは、「高齢化社会」が一例で、人口ピラミッドの変化など、ゆっくりと着実に変化していくものに対応します。
株式相場は一般的に3~5年のサイクルで、成長株が有利なグロース相場と、割安株が有利なバリュー相場を繰り返します。私たちは、各国の経済政策、為替の動き、特定の国にとって有利な状況か不利な状況かなどを総合的に分析しています。常に高成長テーマだけに注目するのではなく、市場環境が成長株に不利だと判断した場合は、安定成長テーマの比率を増やすなど、2つの投資テーマの比率を調整しています。
――いまはまさに“トランプ関税”によるショックで株式相場が大荒れしています。
斎藤 2024年は、安定成長テーマの運用成績は伸び悩みました。しかし、株式市場のリスクが高まる局面では、安定成長テーマの比率を高めることで、ポートフォリオ全体の安定性を図ります。
――投資テーマは、どのように選定されるのでしょうか。
斎藤 世界中には約8万社もの投資対象となる企業があります。その中から有望な銘柄を発掘するには、まず魅力的なテーマを見つけること。そうすることで、有望な銘柄に当たる確率が高まります。
成長テーマは3つの視点に着目しながら選定しています。(1)新たな価値を創造しているか、(2)新興国で恩恵を受けられるか、(3)社会構造の変化に対応しているか。
中長期で大きくなる市場の中に、有望な銘柄があります。今でいえば、成熟したパソコン市場のトップ企業より、成長著しいAI(人工知能)市場で優良な企業のほうが、将来的に高い成長が見込めます。

――現在、8つのテーマが設定されています。具体的に教えてください。
斎藤 高成長テーマには、「新技術」や「AI/ビッグデータ」のほか、「テクノロジーの社会への普及」というテーマがあり、医療用手術ロボットやキャッシュレス決済などの銘柄が含まれます。
安定成長テーマには、「人口ボーナス」(例:インドの銀行)、「高齢化社会」(例:医薬品メーカー)などがあります。
「確立されたブランド価値」というテーマには、マクドナルドやウォルマートが入っていますが、面白いところではフェラーリも含まれます。フェラーリは自動車メーカーですから、一般的にはトヨタ自動車やメルセデス・ベンツ・グループと比較されます。しかし私たちは、フェラーリの最大の強みは圧倒的なブランド価値にあると考え、世界的な高級ブランドであるエルメス・インターナショナルと比較しました。すると株価が相対的に割安なだけでなく、より魅力的な成長が期待できると判断し、投資したことがあります。