「ファシリテーションが下手な人」の共通点

安斎 ファシリテーションが下手な人に共通しているのは、「いちばん聞きたいことを最初に聞いてしまう」ということです。

「今日はこの企画の改善案をブレストします。では、改善案はなんでしょう? なんでもいいのでお願いします」──こういう言い方だと、当然のことながらみんなシーンとなる。

 そこで「なんだよ、こいつら何も考えてないな」などと腹を立てるのは、見当違いも甚だしいと思います。

 本当にそのテーマについて話したいなら、それについての議論は「最後の30分」にとっておく。

 そのうえで、「最初の30分でどんな導入をすればいいか?」「どんなインプットを挟むとよさそうか?」「1人で考える時間をとるのか、最初からみんなで考えるのか?」など、時間の流れをちょっと工夫してみましょう

「会議が盛り上がらない」のは「参加者のやる気」の問題ではなく、「会議の構造」の問題なんです。

 ファシリテーター役をやる人は、事前に10分でもいいから、シミュレーションしてから臨む。

 それだけで、同じメンバー、同じアジェンダでも、ミーティングの質はまったく変わってくるはずです。

安斎 勇樹(あんざい・ゆうき)
株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO
1985年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。組織づくりを得意領域とする経営コンサルティングファーム「MIMIGURI(ミミグリ)」を創業。資生堂、シチズン、京セラ、三菱電機、キッコーマン、竹中工務店、東急などの大企業から、マネーフォワード、SmartHR、ANYCOLORなどのベンチャー企業に至るまで、計350社以上の組織づくりを支援してきた。また、文部科学省認定の研究機関として、学術的知見と現場の実践を架橋させながら、人と組織の創造性を高める「知の開発」にも力を入れている。ウェブメディア「CULTIBASE」編集長。東京大学大学院 情報学環 客員研究員。主な著書に『冒険する組織のつくりかた 「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法』(テオリア)、『問いかけの作法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、共著に『問いのデザイン』(学芸出版社)、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』(翔泳社)、『パラドックス思考』(ダイヤモンド社)、『チームレジリエンス』(JMAM)などがある。