雨後の筍のごとく700社あまりが乱立し、昨今の電力価格高騰では軒並み経営危機に直面している新電力だが、当時はまだ本当の黎明(れいめい)期。プラットフォームとしての「パネイルクラウド」の注目度は高く、潜在需要は大きいものの、なかなか実際の導入に結びつくものではなかった。

 パネイルが並行して進めたのは、自らが電力小売り業者になる道だ。2015年秋から2016年春にかけて、パネイルは全国に8社もの地域販社を設立している。そしてその積極的な営業活動やベンチャー・キャピタルの仲介によって全国の官公庁、一般企業へと顧客層を拡大した。「パネイルクラウド」の力を見せつける、格好のデモンストレーションの場でもあったはずだ。

 つまり看板はパネイルクラウド、中身は新電力というわけで、2017年9月期~2018年9月期の急激な売り上げの伸びは、このカラクリで実現されたものだった。

 ところが2018年初頭、日本卸電力取引所(JEPX)で電力価格が高騰、市場からの電力調達に依存していたパネイルは巨額の損失を被る。明るみに出れば高精度の解析・予測機能を謳う「パネイルクラウド」の名声も地に墜ちる。二重の打撃だ。自己資本も毀損(きそん)した。

 筆者が入手していた情報と民事再生申立書記載の決算書で数値が合わない部分もあり、正確なところは判然としないが、代表の資産管理会社である合同会社パンゲアが6億5000万円もの増資を引き受けることで、債務超過の回避を図った。しかしこのことも当時、公にされることはなかった。

積み重ねた虚偽の果てに
迎えた悲惨な末路

 倒産に至る本質的な要因は、ここまで述べてきたことに尽きる。2019年中にはパネイルの信用不安は多くの人が知るところとなっていたからだ。

 しかしもう少しつけ足して、かつ時間を少し巻き戻せば、2018年4月には東京電力エナジーパートナー株式会社(東京都港区、当時)と提携し、合弁会社の株式会社PinTを設立している。これがどういうことかと言うと、電力価格高騰による大打撃を受けて、秘かに電力小売りの縮小、プラットフォーム事業への回帰を図っていたわけだ。提携先は正確な経営状況を知らなかっただろう。

 申立書にはPinTがプラットフォームの採用第1号との文言がある。「パネイルクラウド」は、15社ほどの大手新電力にプラットフォームとして採用されたはずではなかったか。こうなってくると、もう何が本当なのか分からない。