電力需給管理基幹システムと銘打った「パネイルクラウド」は、電気料金の見積書作成などの営業活動に始まり、顧客管理、電力需給の分析・解析、電源ポートフォリオの作成・自動調達、過去と現在の送電量、季節、天候、気温、時間などの膨大なデータの処理、電力の市場価格や電力使用量の予測、電気料金請求の自動処理までをワンストップで行う。

 つまり“ビッグデータ”を、“AI”で分析し、“クラウド”で提供する。流行りのIT関連キーワードをすべて備え、リリースのタイミングも2016年4月の電力小売り自由化にぴったり合わせたものだった。当時まだ30代半ばの青年社長でありながらどこで学んだのか、心憎いほどに投資家への見せ方、いや魅せ方を心得ていたと言える。

 このころには当然、株式公開を視野に入れている。上位株主にはベンチャー・キャピタルがズラリと並び、金融機関の融資残高も一気に膨らんでいく。「パネイルクラウド」は15社ほどの大手新電力にプラットフォームとして採用され、日本発のユニコーン候補企業としてメディアからも脚光を浴びる。2016~2018年にかけてがパネイルの絶頂期だった。しかしここから急転直下、転落が始まる。

代表の個人会社からの増資で
大幅赤字をしのぐ

 2018年9月期から、決算数字の開示がされなくなった。そして、決算から1年以上経って行われた決算公告で大幅な業績悪化が明らかになる。それによると年収入高約172億6100万円、経常損益が約16億5300万円の赤字、最終損益が約26億6600万円の大幅赤字だった。この数字は帝国データバンクが当初ヒアリングしていたものや、その後筆者(編集部注/帝国データバンク情報統括部所属)が入手していたものとは異なる。

 与信的にはこの決算の混乱が(限定的な範囲だが)明るみに出た2019年初頭の時点で、決算書の信頼性はゼロになりジ・エンドだ。しかしいったいなぜ、こんなことをしたのか。