株式投資界隈で話題の本がある。YouTubeで人気を博す栫井駿介氏の最新刊『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』だ。発売から1週間も経たないうちに増刷が決まるほどの大好評だ。
この物語に登場するのが、個人投資家たちがひそかに通うひばり投資診療所の冷酷な女医・忌部あかり。彼女の診療は、単なるアドバイスではなく、投資家として生まれ変わるための“荒療治”だ。作中でエリート商社マン・波野衿人を叩き直した忌部あかりが、今度はあなたの投資相談に乗る。
「買った株が下がって焦っている」「利益が出たのに、どこで売ればいいか分からない」「決算が良いのに、なぜか株価が暴落……」そんなあなたの迷いに、忌部あかりが診断を下す。優しくなんてしない。でも、あなたを勝てる投資家へと導くために。さあ、診察室へどうぞ――覚悟はできている?(構成/栫井駿介、ダイヤモンド社書籍編集局)

JT(2914)の株、持ったままでいい?
【相談内容】
去年JTの株を買いました。高配当銘柄として推奨されていて、ネットやYouTubeでも「安定感抜群」「長期保有向き」ってすごく推されてたんです。ここ数年株価も右肩上がりだったこともあって……。でも最近の相場を見てたら、不安です。このまま持っていて大丈夫でしょうか?

収益が安定しているから、配当を続けられる
―― 昨年、JTの株を買いました。ただ、最近の相場の不安定さもあって、持ち続けていいのか不安です。
忌部あかり(以下、忌部):そもそもどうしてJTを買ったの?
――「高配当で安定」と多くのメディアやYouTuberが推奨していたので……。でも今は、正直怖くなってて。
忌部:なるほど。つまり、自分でちゃんと調べもせず、誰かが推奨してるって理由で買ったのね。
―― ……はい。自分の判断というより、「大丈夫そう」っていう雰囲気に流された感じです。
忌部:あなた、配当目当てで買ったんでしょう? JTの配当、減ってるの?
―― 減っていません。
忌部:なら、なにをそんなに不安がってるの? 配当は、利益の一部を株主に還元するもの。収益が安定しているからこそ払えるものなのよ。
―― いや……その、若い人はタバコを吸わないし、喫煙者もどんどん減ってるって聞きますし。タバコってもう時代に合ってない気がして。
忌部:“気がして”って印象の話でしょ? 実際のデータを見なさいよ。
“印象”より、“数字と事実”に目を向ける
―― えっと……喫煙率は毎年下がっています。
忌部:業績はどうなの?
―― 売上も利益も少しずつ伸びています。
忌部:じゃあ、“喫煙率が下がっている”という理由だけで、JTの将来を悲観するのは早いんじゃない? 利益が伸びてるのはなぜだと思う?
―― ……タバコの値段が上がってるからでしょうか?
忌部:価格引き上げで、利益を確保できてる。それにJTは、ロシアや中東といった海外市場にも展開していて、日本の喫煙者減少をカバーしてるの。
―― でも、ロシアってリスク高くないですか? 戦争もあるし……。
忌部:もちろんリスクはある。でも企業ってのは、そういうリスクをとるからこそ、リターンが得られるのよ。ウクライナへの侵攻が始まった時はJTも懸念されたけど、それでもビジネスを継続している。撤退せず、利益を出し続けているという事実をあなたはどう見るの?
―― なるほど……。でも正直言うと、タバコ自体にいい印象がないし、ちょっと引っかかってるんですよね。
忌部:あなたが投資に求めるのは、「企業を応援したい」って気持ち? それとも「稼ぎたい」って目的? 投資の軸がどこにあるかを、はっきりさせなさい!
―― ……配当を取りたくて買いました。投資でお金を増やしたいです。
忌部:だったら、気持ちとか印象とか、そんな曖昧なことじゃなくて、数字を見なさい。投資で稼ごうと思ったら、不安に振り回されて売買するのは最もダメなこと。印象に流されず、“数字”と“事実”で判断するべきよ。
※本記事は、『買った株が急落してます!売った方がいいですか?』(栫井駿介・著)の登場人物・忌部あかりをもとにしたフィクションです。