千太さんの子どもであることを否定するには別の方法があります。それは「嫡出否認の訴え」を家庭裁判所に起こすという方法です。

 この訴えには期限があり、“子の出生を知った日から3年以内”に起こさなければいけません。

 まだ時間は十分あります。

 千太さんは、私たちの調査によって以下の証拠を集めました。

・妊娠時期は千太さんとの性交渉がなかったことを裏付ける舞美さんと友人とのメッセージ
・複数の男性との浮気を裏付ける舞美さんと友人とのメッセージ
・「井ノ原さんとの子だと、舞美さんと井ノ原さんが言ってた」という友人の証言
・夫婦間の完全な別居実態のメールやメッセージ
・舞美さんのDNA鑑定拒否メッセージ

 これらの証拠をまとめ、千太さんは弁護士に相談しました。

 メッセージやメールは嫡出否認の証拠となり得ることと、裁判の時に友人が証言を確約してくれるのなら十分勝てる見込みはあるということでした。

真実を確認できた依頼者
しかし気持ちは晴れず

 千太さんは訴訟の準備をなるべく早く進めて嫡出否認の訴えを起こしました。

 訴えの内容証明を受け取った舞美さん側は、拍子抜けするほどあっさりと折れました。

 養育費請求は撤回し、戸籍上の父からの除籍の処理も滞りなく終わりました。

 千太さんは、晴れて真実を手にしたのです。

 全てが終わった千太さんは「勝ったとは思ってません。子どもには何の罪もないし、あの子には心から幸せになってほしい。舞美も子どものために生きてほしい。だから勝ったとか負けたではないんです。

 あのまま黙っていたら真実は隠され、僕は“一生背負うべきでない責任”を負わされていたんです。

 誰の子かも分からないまま、ただ“法律上そうだから”という理由で、他人の子どもの父親になるなんて、あまりにも残酷です」

 その言葉を聞いたとき、私たちも胸が苦しくなりました。

 探偵の仕事は、時に“裏切り”の事実を突きつけることにもなります。

 しかし、その裏切りから「本当に守るべきもの」を取り戻すことも、我々の使命だと信じています。

 もし千太さんのような立場の方が周りにいたら教えてあげてください。

・離婚後300日以内に生まれた子どもは、前夫の子と推定される
・性交渉がなかった証明(LINE、証言、記録)が重要
・DNA鑑定を拒否されたら、それ自体が大きな“疑義”になる
・「嫡出否認」は、出生を知ってから3年以内に必ず行うこと

 疑問を持ったらすぐに行動することが、自分の未来と尊厳を守る鍵になります。

 どうしたらいいのか分からない方は、まずは探偵に相談してみてください。一歩でも、たとえ半歩でも前に進めるようにサポートするのも探偵の仕事です。

「養育費請求の裏側にある真実を追求する探偵」。点と点が線になる探偵トークでした。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。