Diamond Premium NewsPhoto by Yoshihisa Wada

温度センサー大手の芝浦電子を巡り、台湾の電子部品大手、国巨(ヤゲオ)とミネベアミツミとの間で争奪戦が激化している。ヤゲオによる芝浦電子への同意なき買収に、ミネベアミツミがホワイトナイトとして名乗りを上げた。ヤゲオが4月17日に買収価格を大幅に引き上げ、ミネベアミツミの次の一手に注目が集まる中、同社の貝沼由久代表取締役会長CEO(最高経営責任者)がダイヤモンド編集部のインタビューに応じた。貝沼氏はヤゲオの出方を想定内と強調し、価格のさらなる引き上げについては「積極的に検討している」と言及した。今回の買収を決断した理由や覚悟に加え、駆使してきたM&A(合併・買収)に関する哲学も語った。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

台湾の電子部品大手が芝浦電子に同意なき買収
ミネベアミツミがホワイトナイトに名乗り

 ミネベアミツミは4月10日、温度センサー大手の芝浦電子を買収すると発表した。芝浦電子に買収を提案していた台湾の電子部品大手の国巨(ヤゲオ)に対抗するホワイトナイトとして名乗りを上げた。

 ヤゲオは昨年末、車やロボットなどに使われる「サーミスタ」と呼ばれる温度センサーの世界シェア1位の芝浦電子に買収を提案。2月には1株4300円でTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。芝浦電子の同意は得ておらず、「同意なき買収」となった。

 ホワイトナイトとなったミネベアミツミはヤゲオの提案を上回る1株4500円でのTOBを提案。ミネベアミツミと芝浦電子が10日に実施した共同記者会見で、ミネベアミツミの貝沼由久代表取締役会長CEO(最高経営責任者)は「日本の優れた技術を守る」と強調した。同社は8つの分野をコア事業とする「8本槍(やり)戦略」を掲げ、今回の買収で芝浦電子をセンサー事業の中核とする計画だ。

 だが、1週間後の17日、ヤゲオは当初1株4300円としていたTOB価格を5400円へ引き上げると発表。ミネベアミツミは23日に開始予定だったTOBの延期を迫られることとなった。

 TOB合戦に参戦したミネベアミツミはM&A(合併・買収)を駆使して急成長を遂げてきた。主導してきたのが、ミネベアの社長や会長を歴任した義父の高橋高見氏の招きで1988年に入社した貝沼氏である。貝沼氏は過去10年で17社のM&Aを手掛け、ミネベアミツミの24年3月期の売上高は1兆4021億円と、10年前の3715億円(14年3月期)から約4倍に伸びた。

 M&A巧者ともいえるミネベアミツミの次なる一手に注目が集まる中で、貝沼氏が24日にダイヤモンド編集部の取材に応じた。次ページで、貝沼氏のインタビューの全文を紹介する。貝沼氏はヤゲオに対抗した価格のさらなる引き上げに関し、「こういうチャンスはもう来ない」などとし、「積極的に検討している」と言及。今回、買収を決断した理由やその覚悟についても打ち明けた。

 また「提案を公平に扱っていない」などとするヤゲオ側の言い分にも真っ向から反論し、「誰が見てもわれわれがいいに決まっている」と主張した。さらに、ミネベアミツミのM&Aが成功してきた理由など、M&Aに関する持論を解説してもらった。