社外取バブル2024最新版「10590人」の全序列#7Photo by Ryo Horiuchi

海洋土木の東洋建設は5月、6月下旬に大林東壽社長が副会長に就き、中村龍由取締役常務執行役員が社長に昇格する人事を発表した。大林氏は昨年に社長に就任したばかりで、2年連続での社長交代となった。同社では、大株主で任天堂創業家の資産運用会社、ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)が2023年の株主総会で提案した取締役候補が取締役会の過半数を占めている。異例のトップ交代はなぜ起きたのか。特集『社外取バブル2024最新版「10590人」の全序列』(全14回)の#7では、東洋建設の取締役会で起きた”地殻変動”について解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

東洋建設で2年連続の社長交代
経営体制に起きた地殻変動とは

 わずか1年で交代――。海洋土木の東洋建設は5月10日、6月26日付で大林東壽社長が副会長に就き、中村龍由取締役常務執行役員が社長に昇格する人事を発表した。また、新たに最高経営責任者(CEO)職と最高執行責任者(COO)職を設け、吉田真也会長がCEOを、中村氏がCOOを兼任する。昨年、社長に就いた大林氏は1年で退くことになる。

 東洋建設は昨年に大きく経営体制が変わった。発端となったのは、任天堂創業家の資産運用会社、ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)による買収提案である。

 YFOは、2022年3月に準大手ゼネコンで前田建設工業を傘下に持つインフロニア・ホールディングスが東洋建設に対して実施した株式公開買い付け(TOB)に割って入った。TOB価格はインフロニアの1株770円を大きく上回る1株1000円とした。

 YFOは同年5月に友好的な協議を前提にTOBによる非公開化を提案。そして、インフロニアによるTOBが不成立となり、YFOは東洋建設の経営陣と買収提案を巡って協議を進めてきた。だが、両者の主張は平行線をたどった。

 両者の溝が深まる中で、YFOは23年6月の東洋建設の株主総会で株主提案に踏み切る。結果は、YFO側が推す取締役候補が7人選任された一方、東洋建設側は6人にとどまった。株主提案で株主側の取締役が取締役会の過半数を占めるのは極めて異例のことだ。

 新体制の船出はスムーズとはいかなかった。東洋建設側とYFO側の取締役の間で対立が生じたのだ。実際、株主総会後に開かれた取締役会は3時間にも及ぶなど紛糾。YFO側が提案した吉田氏が代表取締役会長に、会社提案の大林氏が代表取締役社長に、平田浩美氏が代表取締役副社長にそれぞれ就くことで落着した。

 経緯を見ても、東洋建設側にとっては、大林氏の代表取締役社長は譲れない一線だった。にもかかわらず、その大林氏がわずか1年で代表取締役社長から外れ、代表権のない取締役副会長に退くこととなった。異例ともいえるトップ交代が起きたのはなぜか。

 トップ人事に加え、実はYFOが推薦した取締役が6月以降の新体制で2人減少する。加えて、社外取締役も含め取締役のメンバーも大胆に見直された。次ページでは、東洋建設の取締役会で起きた”地殻変動”について明らかにするほか、新たな取締役体制のポイントを解説する。