田中角栄も実践していた
心をつかむ人心掌握術
若い人の中には名前すら知らない人もいるかもしれませんが、1972年、今でいう中学卒業という学歴しかないにもかかわらず、内閣総理大臣にまで上りつめた田中角栄氏には、中央省庁の官僚の配偶者の誕生日まで記録し、記念すべき日には花束を届けたというエピソードがあります。
官僚からすれば、自分の妻の誕生日に、総理大臣からバラの花束が届くというのは感動ものです。「この人を支えよう」という気持ちになるのも道理というものです。
同じことは、総理大臣や財務大臣、それに自民党副総裁を歴任してきた麻生太郎氏にも言えます。筆者が目撃した国会での会話を1つ紹介します。
「君が出した企画案だけど、じっくり見せてもらったよ。斬新で良いじゃないか」
声の主は、当時、財務大臣だった麻生氏。相手は財務省の若手官僚でした。この官僚からすれば、上司である大臣が自分の企画案に目を通し、ほめてくれるというのは、このうえない喜びだったに相違ありません。
田中氏や麻生氏を評価しないという人もいるでしょうが、こういう側面が、部下たちを「この人に付いていこう」という気持ちにさせてきたのです。
「好意の返報性」は、いつでも誰に対しても使える法則です。是非、きょうから試してみてください。
「アロンソンの不貞の法則」
他人からほめられた方が心に響く
同じ部署に所属する同僚から持ち上げられるよりも、他部署の人間から評価されたほうが信憑性がありますが、信憑性だけでなく、そのほうが相手の心に響くということも忘れてはいけません。
これを「アロンソンの不貞の法則」と言います。
この法則は、アメリカの社会心理学者、エリオット・アロンソンが1965年に発表したもので、親しい人や身近な人にほめられるよりも、新しく出会った人やあまり親しくない人からほめられる方が人の心に響きやすいという法則です。
そう言われてみれば、筆者自身、いつも顔を突き合わせている人よりも、初対面の相手や、他部署の付き合いの浅い人にほめられたときのほうが、「ちゃんと見てくれているんだ」と満たされた気がします。