
優秀なはずだった社員が、管理職や経営陣になると「あれ?」という働きになるケースは会社において珍しくない。そんな「あるある」には、とある法則が隠されているのだ。会社に関係する法則を知って、自社の人材活用を見直すヒントを探ってみよう。※本稿は、清水克彦『知って得する、すごい法則77』(中公新書ラクレ)の一部を抜粋・編集したものです。
有能な現場社員が
いい経営陣になるとは限らない
「あの人、昔は有能だったのに……」
職場で、こんな声を聞くことはありませんか。筆者は前職の在京放送局でも、現在の勤務先である大学でも、しばしばこのような声を耳にしてきました。
これは、「ピーターの法則」に関連するものです。
この法則は、1969年、アメリカ・南カリフォルニア大学の教育学者、ローレンス・J・ピーター教授が提唱したもので、人は、職場において、能力の極限まで昇進し、最終的に自身の無能さが露呈してしまう職位に到達してしまうというものです。
もちろん、無能な社員や、たとえ能力は高くても、上司に敬遠されたり運がなかったりした人は平社員や低い職位に留まることになりますが、たとえ有能な社員であっても、やがて無能な管理職になり、職場全体が、無能な人や、やる気を失った人で埋め尽くされてしまうということになります。
筆者が長く勤めてきた在京放送局の例で言えば、番組制作に秀でたプロデューサーや放送局の顔となるような実績を積み重ねてきたアナウンサーが、必ずしも優秀な管理職、もっと言えば、良い経営陣になれるとは限りませんでした。