ちょうど1年前の
『虎に翼』でも登場
なぜなら、現実には存在しない架空の事件だから。知らなくて当然なのだ。ただしモデルはある。
「帝人事件」である。
1934(昭和9)年に起こった、帝国人造絹糸株式会社における株式売買をめぐる贈収賄事件。関わった官僚や大臣たちが逮捕され、その影響で当時の斎藤内閣が総辞職したという大きな事件である。
帝国人造絹糸株式会社だから「帝人事件」と呼ばれる。それをモチーフにして、朝ドラ『虎に翼』(2024年度前期)では「共亜事件」が起きた。ちょうど、1年前の今頃、第4週から5週にかけてのことだ。
主人公・寅子(伊藤沙莉)の父で銀行員の直言(岡部たかし)が銀行の理事と共に株の取引にかかわり賄賂を贈った罪に問われ裁判にかけられた。法律を学んでいた寅子は、父の無罪を晴らすべく、有能な法律家の力も借りながら、自らも懸命に調査した。
「帝人事件」をモデルにした事件だという根拠は、判決文で、「帝人事件」と同じ「あたかも水中に月影を掬いあげようとするかのごとし」が使用されたからだ。
ちなみに、『あんぱん』では高知新報、『虎に翼』では帝都新聞。読んでいる新聞は違う。朝ドラの世界線ではこの時代、どの新聞でも「共亜事件」が大きく報道されていたことになる。
朝ドラを続けて見る楽しみは、こういうところにあるのだ。
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第21回の主なシーンより


