朝ドラファンならピンとくる「事件」、1年越し再登場のサプライズ【第21回レビュー】

朝ドラファンなら
ピンとくる「共亜事件」

 女子師範学校には、怖い人たちがたくさん待ち受けていた。まず、第4週から何度もちょっと出していた黒井雪子(瀧内公美)。怖そうだったが、期待通り、強烈に怖かった。

「家族のために」勉強すると言うのぶに「おろかしい」「お国のために尽くす覚悟のない者は去りなさい」と冷たい言葉を放つ。

 出た。「お国のため」。この言葉が出てくると、要注意である。

 さらに、同室には先輩がふたりいて、彼女たちも扱いがひじょうに面倒くさそうである。ここでは令和だったら確実にハラスメント案件のことが当たり前のように行われていた。救いは幼馴染のうさ子(志田彩良)が一緒であることだ。ふたりで手を取り合って厳しい学校生活を乗り切ってほしい。

 のぶをそっと見送った嵩は勉強に身が入らない。千代子(戸田菜穂)には、医者になればこの家(病院)はあなたのものと励まされるが、そんなことで欲望が刺激され、勉強をやる気になる嵩ではなかった。彼は机に向かって医者を主人公にした漫画を描いてしまう。

 そこに、千尋(中沢元紀)がやって来て、新聞を差し出す。

「共亜事件」という事件が載っていて、千尋はそれを見て、ますます法律家になろうという意欲を燃やしたようだった。正しいことを正しいと認められる世の中にしたいのだと言う千尋に、本当は何をしたいのか、心のうちを吐き出すように促され、ついに嵩は叫ぶ。

 ほんとうは漫画を描きたいのだと。

 グダグダしていた嵩がようやく腹を決めたようで、これからの嵩は漫画に邁進するのだろうか。この先は今後のお楽しみとして、今日は、千尋が言った「共亜事件」について紹介しよう。

 この事件を知っているかと聞かれた嵩は「キョーア事件ね」と知ったかぶりをするが、ほんとはよく知らない。

 これまで朝ドラを欠かさず見てきた視聴者ならこの事件にピンとくる。でも、今回『あんぱん』ではじめて朝ドラを見た人がいたら、嵩のように「キョーア事件?」とぼんやりした印象しか持てないだろう。むしろ、昭和の歴史に詳しければ詳しいほど、そんな事件、この時代にあったっけ?と首をかしげるかもしれない。