
宿泊費が高い。インバウンド爆増の影響で大都市圏をはじめ地方でも値上がりが常態化している。東京と海外の都市でホテル価格の比較をすると、驚くべき事実が判明した。(ライター 前林広樹)
都内の高級ホテル15社に
「価格カルテルの恐れ」報道
帝国ホテル東京、The Okura Tokyo、パレスホテル東京、ホテルニューオータニ――名だたる老舗高級ホテルに、ある疑惑が生じている。4月中旬、東京都内15のホテルが「価格カルテルの恐れ」と報じられた。
訪日旅行客(インバウンド)急増を背景に宿泊料金が高騰しているが、その裏、各ホテルの営業担当者が集まり情報共有する会合が十数年以上も続けられていたことが判明したのだ。
宿泊料金を一斉に引き上げるなどの行為は確認されなかったものの、この会合は公正取引委員会から問題視された。出張費や旅行費の高騰に苦しむ利用者からも、疑問や不満、怒りの声が上がっている。
日本では今、高級ホテルの整備が大都市圏や地方でも進んでいる。しかし、諸外国に比べるといまだ十分な数があるとは言えないのが実態だ(詳細は後述)。ヒルトンやシェラトンといったグローバルなブランドに日本で泊まろうとすると、他国よりも数万円高いことも珍しくない。
高級ホテルの数そのものを増やしていかない限り、ホテル不足のしわ寄せは、ビジネスホテルやシティホテルに泊まる日本人客にも及ぶ。観光立国の大きな制約条件となっている高級ホテル不足について、考察してみたい。
東京の有名ブランドホテル
香港・上海・シンガポールよりも高かった!
まず、都内の高級ホテルの宿泊費がいかに値上がりしているか、海外の都市と比較してみよう。以下、価格表示は全て、大手予約サイトのエクスペディアで7月1日から1泊(2名1室)で検索したもの(税・サービス料込み)。
前述の会合に参加していた15社の中で、グローバルなブランドでもあるハイアットリージェンシー東京の、最安値は5万1612円(28平米の部屋)だった。
同じ条件でハイアットリージェンシーを検索すると、香港の尖沙咀地区では3万7608円(28平米)、米サンフランシスコのダウンタウン・ソマ地区では4万3566円(33平米)だった。
東京と同様、香港やサンフランシスコも物価が上昇しているが、ホテル料金は東京が圧倒的に高いことが分かった。