頑張って通勤していた社員たちは、「何のための苦労だったのか」と嘆いていました。管理職が、「毎日通う」というある種の苦行を社員に課し、それを共有することに価値を見いだしていたものと思われます。

 上から丸投げされる指示に必死に従っているうち、不平不満は溜まっていき、次第にメンタルをコントロールできなくなっていきます。我慢を続けてうつギリギリの状態になる人や、適応障害として顕在化する人も現れます。

 反対に、社長がまだ30代のあるIT系企業では、フルリモートが可能ですが、オフィスはフリーアドレス。1人ずつブースがあって、オンライン会議ができるようになっています。それに加えて、運動用の器械が置いてあるし、ストレッチのインストラクターを毎週呼んで、予約制で安くレッスンを受けられます。ストレッチがやりたくて出社する人もいるし、そもそも自宅にいるより居心地がいいので出社してくる人も多いそうです。

 悪しき企業風土が従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすこと、それによって企業活動に弊害がもたらされることを問題視し、対策を取っている国がイギリスです。イギリスでは、国内最大規模の投資運用機関CCLA(Charches, Charities and Local Authorities)が、ウェルビーイング経営の普及に努めているのです。次に、その目的と具体的な内容を紹介しましょう。