しかし、ここでさらに大事な3つ目のポイントがあります。それは、

 依然として「ドラクエ型」できっちり取り組むことが勝利の鍵である分野は残り続けるし、日本としてはそこの強みを崩壊させないようにすることも大事だ

……という部分なんですよね。「水と油」(※編集部注/筆者は、徹底した個人主義や狭義の合理性重視の姿勢を「水の世界」と呼び、多くの人たちの自発的な連鎖、少しずつ傷を塞いでいくような生命的連携を生み出す基盤の部分を「油の世界」と呼んでいる。日本社会は「油の世界」の性質が強い)の話に戻ってきましたね?

「油側」の気持ちを吸い上げながら
最新技術の実装を考えよう

 ご想像のとおり、「油側」の組織は「ドラクエ型」に強く、「水側」の組織は「FPS型」に強いという対応関係があります。

 グローバルな環境変化に対応するために「水側」の視点に立ち、必要な改革を行おうとする時に、「油側」の事情とぶつかってしまうと、日本はそこで前に進めなくなってしまいます。

 ここの部分でも、お互いの違いを活かした連携を立ち上げ、両側から協力してそれを実現することがどうしても必要になってくるんですね。

 今必要なのは、その発想の転換なのです。

書影『論破という病「分断の時代」の日本人の使命』(中公新書ラクレ)『論破という病「分断の時代」の日本人の使命』(中公新書ラクレ)
倉本圭造  著

 むしろ、メタ正義的に考えられた「明確な意志を持った使い分け」ができるようになることで、利害対立自体を消滅させてしまうのです。

「ドラクエ型」が必要な分野においては徹底して自分たちの強みを活かし、一方で「FPS型」でやるべき分野では徹底的にFPS型の論理で動かせるようにしていく。

 アメリカのように社会全体がFPS型の産業に最適化されているように見える国では、あまりに社会が流動化しすぎてコミュニティが破壊されてしまった上に経済格差が広がりすぎ、経済・経営以外の部分で社会運営上の問題が噴出しています。対立が激しくなりすぎて、自動運転タクシーが暴動によって焼き討ちにされるような事件も起きている。

 日本では、そこで「油側」の人々の気持ちをうまく吸い上げながら、最新技術の社会実装を考えていくことがこれから重要になってくるでしょう。