もちろん、腰を据えて自分なりに徹底してやる時間がゼロになるのも問題ですが(若い人もぜひそういう時間の価値を見直していただければ)、そのドラクエ的地道さを失わずにさえいれば、むしろどんどん色んな情報を取り入れて自分を変えていくことで、「あらゆるクリエイションは組み合わせである」という“よくある警句”が隠し持つ本当の深い意味を知る体験にもなりえるでしょう。

 ともあれ、ここから、「ドラクエ型」と「FPS型」といった競争条件の違いをもとに、日本経済の凋落と今後の復活のための方向性について考察していきます。(“ドラクエ型”に対して“エーペックス型”と呼ばないのはちょっと不自然に感じるかもしれませんが、単に日本の読者における知名度の問題だと思ってください)

「ドラクエ分野」では世界一だが
「FPS分野」には超弱い日本

 日本は、「ドラクエ型」で対処できる分野においてはいまだに世界で強いのです。

 自動車産業もそうですし、スマホの中の小さな部品とか、半導体製造に使う特殊な機械とか材料とか、化学製品なども世界シェア1位のものが沢山あります。

 一方で、「FPS型」的に千変万化する状況に対処しないといけない分野における凋落ぶりは目も当てられません。

 ソフトウェア関連はほぼ「FPS型」だという話でもありますが、ソフト以外のものづくり分野でも、家電やスマホなどはこの競争に巻き込まれてしまいました。

 自動車と、家電やスマホの業績の違いについて、経営学の世界では「家電やスマホはコモディティ化が進んで“すり合わせ型”から“組み合わせ型”に変化したからだ」というような説明がなされます。

 家電やスマホの製造は、1社あるいは1国の内側だけで密度濃く「すり合わせ」をして精度を高めるより、既に世界共通で定番化された部品を大量に集め、“ただ組み立てるだけ”(これはこれで非常に優秀で粒揃いの工場従業員を世界需要の変動波に合わせてフレキシブルかつ大量に集めたりする大変難易度の高いビジネスではありますが)で良いものができてしまう「組み合わせ」型の産業になったわけですね。

 結果として家電やスマホの製造は、需要の変化を先読みして部品を大量に買い集め、その瞬間に最も労働力が安い土地で大量に組み立て世界中に売りまくるビジネスになっていて、FPSのゲームのように「一瞬~数秒」とはいわないものの、例えば1カ月前と同じ状況判断でボケーッと同じことをやっているようでは話になりません。