今年も五月病の季節がやってきた。新年度スタートからはや1か月。社内外の人間関係で悩んでいる人も多そうだ。そんな人にお薦めなのが、「これは傑作。飛び抜けて面白い必読の一冊」「本当に悩みが解消した」と絶賛されている『「悩まない人」の考え方 ―― 1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』(木下勝寿著)だ。今回は、「絶対達成コンサルタント」として数々の実績を残してきた横山信弘氏が本書から学んだ「管理職の悩みを解消するヒント」をお届けする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

40代マネジャーが10年以上抱えていた「主体性ゼロの部下を動かせない」悩みが一瞬で解消した驚きのテクニックPhoto: Adobe Stock

「主体性ゼロ部下」にどう接するか?

「どうしたら、もっと主体的に動いてくれるんだ……」

 35歳に課長になり、初めてきた部下。その部下は主体性がゼロだ。
 とにかく自分からやろうとしない。積極的に動かないし、何度も言わないと行動しない。

「どうしたらいいんだ」

 誰でもあることだ。部下育成だけではない。
 長年悩んでいることが、なかなか解消されないのは本当にツラいことだ。

 そこで今回は40代マネジャーの事例をもとに、「長年悩んできたことが一瞬で解決する」考え方やテクニックについて解説していこう。

 一度悩んだら、ついつい何年も悩み続けてしまう人は、ぜひ最後まで読んでもらいたい。

本当に、長年解消されなかった悩みが一瞬で解決するの?

 誰にでも「これをやろう!」と思っても、なかなかできないことがある。

 たとえば、先送りのクセが直らない。人前で話すのが苦手。部下に厳しく言えない。自分の思っていることをうまく言葉にできない――こんな悩みは、誰にでもある。

 ところが発想の逆転をすることで、そんな悩みも一瞬に解消するコツ、テクニックがある。
 ポイントはリフレーミング。物事を別の角度から見ること。思い込みを潔く捨てることが大事だ。

 ベストセラー『「悩まない人」の考え方』によれば、数年来の悩みがある場合、多くの人は「ちょっとやそっとのことでは解消しようがない。悩みが消えるにはものすごい時間がかかる」と決めてかかりがちだ。

 この思考により、本来は取るに足らない問題が人生を左右する大問題に思えてくる。そしてますます「悩んでいる自分」が常態化してしまうという。

 私にも似た経験がある。
 ある上司との人間関係に5年以上悩んでいた。

 まわりから「そんなに長い期間悩むことじゃない」と指摘されても、「そんなに簡単に言うな!」といつも反論した。

 その悩みが解消されることなんて、ないと決めつけていた時期があった。

 しかし『「悩まない人」の考え方』で紹介されている「悩まない人」は真逆の考え方をするそうだ。

「悩んできた期間」と「悩みの解消に必要な時間」との間にはまったく相関性がない。どんな積年の悩みも一瞬で消すことができるのだ、と。

 確かに、その通りである。

 実際に、先述した人間関係の悩みもあっけなく解消した。
 ひょんなことからバーベキュー大会で同じグループになった。そして一緒に肉を焼いている間に話が弾み、意気投合してしまった。

 ずっと小難しい人だとレッテルを貼っていたが、完全なる私の思い込みだったのだ。その日は、「悩み続けた5年間を返してほしい」と思ったほどだ。

 このように、ずっと悩んできたことがほんの一瞬で解消した経験がある人は少なくないだろう。

「これをなんとかしないと、もうこの職場でやっていけない!」というほど真剣に思い詰めていた長年の悩みが、ある人のちょっとした一言や、本で読んだ一節をきっかけに、フッと消えてしまうような経験が。

単純なことを複雑に考えていないか?

 冒頭で紹介した40代マネジャーについてだが、相談を受けたとき、私はまずこう伝えた。

単純なことを複雑に考えるのではなく、
 複雑なことを単純に考える思考を持ちましょう
」と。

 講演の中で、私がよく引用するのは稲盛和夫氏の名言である。

 ・バカな奴は、単純なことを複雑に考える
 ・普通の奴は、複雑なことを複雑に考える
 ・賢い奴は、複雑なことを単純に考える

 私がこの名言を紹介するのは、複雑に考えがちな人ほど、安定して目標を達成できないからだ。
 反対に、物事をシンプルに捉え、愚直に続ける人が、常に目標を「絶対達成」できる。

 しかし高度情報化時代となり、単純なことを複雑に考える人が極めて多くなった。
 特に部下育成を任されている上司たちに顕著だ。

 まずは「思い込み」を排除し、リフレーミングしてもらうためにも、私はいつも「単純なことを複雑に考えていないか、自問自答して」と伝えている。

仮説を立て、法則性を見出す方法

 そうは言っても、なかなか「単純に考えられない」という人もいるだろう。
 長年思い悩んできた人であれば、なおさらだ。

 だから『「悩まない人」の考え方』にも紹介されている通り、書き出してみるのがいい。自分の頭の中を文字にして、客観視することでリフレーミングしやすくなる。

 私は「どうすれば部下は主体性を発揮するのか?」という仮説をつくろうと、ホワイトボードを用意した。仮説を立てるために、過去の事例を書き出すためだ。

 仮説を立てるには、この場合「帰納法」を用いる。
 複数の事例や観察結果から、そこに共通するパターンや規則性を見出し、推論するやり方だ。最も一般的な推論法である。

 過去の事例を5つか6つ書き出していったら、ほどなく法則性が見つかった。
 部下が主体性を発揮したときと、発揮しなかったとき、実際に次の3パターンが浮かび上がってきた。

(1)部下の慣れた仕事は、主体的に取り組む
(2)部下に明確な「期限」と「ゴール」を示すと、主体性が増す
(3)部下に「選択肢」を与えると、主体的に考え始める

 実際にホワイトボードで書き出していくと、45分で仮説ができた。

「そうだ、そうかも!」とこの課長は喜んだ。
 10年以上悩んできたことが、まさに霧が晴れるように「解消」したのだ。

慣れないことや、曖昧な指示をした業務は主体的にやらない。それだけだったんだ

まとめ

『「悩まない人」の考え方』を読むと、目からウロコな表現がとても多い。
 そのうちの一つが、

悩んできた時間と、悩みの解消に必要な時間とのあいだには、まったく相関性がない

 である。「まさに!」と膝を打つ思いであった。

 確かに、国家存亡の重大決断でもない限り、だいたい“1時間集中して”考えれば解決策は思いつくものだ。一見難しい問題でも、シンプルに捉えることで解決の糸口が見える。

 当事者や関係者が集まって議論すると、リフレーミングしづらいかもしれない。なので、あまりそのテーマに関係のない人物を交え、1時間集中して考えれば、たいていの悩みは解消することだろう。もちろん、完全に解決はできなくても糸口(仮説)ぐらいは見つかるはずだ。

 先述した40代マネジャーも、私とのディスカッションの後、仮説検証を繰り返して部下の主体性を引き出していった。

 悩みが10年続いたからといって、解決に10年かかるわけではない。
 必要なのは時間ではなく、適切な視点なのだ。
 物事をシンプルに捉えることで、いかなる悩みも一瞬で消え去る可能性がある。
 特に現代のマネジャーは、そのように受け止めて部下育成に励んでもらいたい。

(本書は『「悩まない人」の考え方』に関する書き下ろし特別投稿です)

【執筆者プロフィール】
横山信弘(よこやま・のぶひろ)
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント
最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成する部下の育て方』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。