今年も五月病の季節がやってきた。新年度スタートからはや2か月。社内外の人間関係で悩んでいる人も多そうだ。そんな人にお薦めなのが、「これは傑作。飛び抜けて面白い必読の一冊」「本当に悩みが解消した」と絶賛されている『「悩まない人」の考え方 ―― 1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』(木下勝寿著)だ。今回は、「絶対達成コンサルタント」として数々の実績を残してきた横山信弘氏が本書から学んだ「管理職の悩みを解消するヒント」をお届けする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

【第1回】40代マネジャーが10年以上抱えていた「主体性ゼロの部下を動かせない」悩みが一瞬で解消した驚きのテクニック

Z世代の部下から「仕事がつまらない」と言われて悩み疲れた上司、一体どう返したらいい?Photo: Adobe Stock

課長が絶句した理由

「課長、仕事がつまらないんです。どうしたらいいですか?」

 24歳の部下に突然そう言われた課長は、絶句してしまった。

「仕事がつまらないって……。困ったな」

「結果が出ない」とか「お客様のニーズがわからない」といった相談なら一緒に考えられる。だが、「仕事がつまらない」という悩みを打ち明けられても……。

 あなたがこの課長だったら、部下に一体どんなアドバイスをするだろうか?
 そこで今回は、世代間ギャップを乗り越え、Z世代の若者が仕事を面白がるには、どうしたらいいのか?

 そのコツについて一緒に見ていこう。
 悩める上司は、ぜひ最後まで読んでほしい。

いっそう悩みを深めた部下

「仕事がつまらないんです。どうしたらいいですか?」

 こう相談を受けた課長は、「仕事を楽しめばいい」と即答したそうだ。

「つまらないだなんて思わず、純粋に楽しめばいい」

 課長は前向きなアドバイスをしたつもりだった。
 ところが逆に、それがきっかけで部下の悩みはいっそう深まってしまったという。

「楽しめないのは、自分に何か問題があるのだろうか?」

「楽しい」と「面白い」の違いって?

 私が相談を受けたとき、課長には次のようにアドバイスした。
「楽しい」という表現よりも「面白い」を使ったほうがいい、と。

 仕事で「楽しい」と「面白い」は似た感覚を表しているが、本質的には異なる。
「楽しい」とは、感情的な満足感や幸福感を指す。

 たとえば、職場の人間関係が良好だったり、成功体験を共有したりするときに感じるものだ。

 一方、「面白い」は知的好奇心や興味が刺激される感覚のこと。
 結果よりプロセスや新たな発見に重きを置く。

 たとえば、難しい課題を解決するプロセスや、新しい視点を得たときに「面白い」と感じるだろう。まさにゲームと同じだ。

 部下に「仕事を楽しめ」と直接言っても効果は薄い。
「楽しい」という感情は自分でコントロールできないからだ。

 代わりに「面白さ」に焦点を当てたアプローチをしよう。

上司はどう「面白さ」を伝えるべきか?

 ベストセラー『「悩まない人」の考え方』によれば、「面白い仕事」と「面白くない仕事」の区別はない。あるのは「どんな仕事でも面白くできる人」と「仕事を面白くできない人」の違いだけなのだ。

 そして仕事がつまらないのは、運のせいでもない。仕事そのものが原因でもない。「仕事を面白くするスキル」が足りないからだ、という。まったく同感である。

『「悩まない人」の考え方』にも書かれているが、仕事の面白さに直結するのは、成果が出るかどうかである。どんなに仕事のプロセスが苦しくても、成果が出れば、

「面白い!」

 と思えるはずだ。
 ゲーム感覚で仕事と向き合うことができれば、「つまらない」とは思えないだろう。

 私の体験を書こう。19歳の頃、北海道の知床で住み込みのアルバイトをしていた。
 そこで木彫りの熊を売っていたのだ。

 最初のうちは、観光客に木彫りを売るだけの仕事が「つまらない」と感じていたが、一緒に働いていたアルバイトと、「1日で、どちらが木彫りを多く売れるか」を競争し始めたら、とたんに面白くなった。

 店長に木彫りの熊のアピールポイントを聞き、一つひとつの商品ごとに魂が込められて製作されていることを知った。

 売れば売るほど商品に興味を持ったし、商品の開発ストーリーを知れば知るほど売れるようになった。面白くて仕方がなかった。

 最初はゲーム感覚で木彫りの熊を売り始めた私たちだったが、2週間もすると、2人ともこの木彫りの魅力にとりつかれていた。

仕事を面白くするには「オタク的視点」を持て!

 ゲーム感覚で取り組むことも重要だが、それ以外にも私は「オタク的視点」を持つことも大事だと考えている。

 仕事に対して「面白い」と感じるには、対象となる仕事に強い好奇心を持てばいいのだ。では、どのように好奇心を持つのか? 興味、感心を持つのか?

 それは情報収集である。そのテーマに対してトコトン情報を集める。

 私はこの姿勢を「オタク的視点」と呼んでいる。

 先述した通り、私は木彫りの熊について、トコトン店長に質問して情報を集めた。

 鮭をくわえた熊だけでなく、立っている姿勢や、座っている姿勢の熊もいること。
 彫り方にもいろいろある。

「荒削り」と「毛削り」では、どのような違いがあり、どんな技術が必要かも教えてもらった。

 知れば知るほど興味が湧いた。
 このように「オタク的視点」で物事を考えると、成果まで出さなくても、そのテーマに対して「興味深い」「面白い」と感じるはずだ。

上司自身が「面白がる」ことが大事

「仕事がつまらない」と悩む人は、『「悩まない人」の考え方』に書かれてある通りスキル不足なのだ。

仕事を面白くするスキル」を磨こう。

 このスキルは、どんなビジネススキルよりも実用的で、仕事人生を豊かにするだろう。

 ゲーム感覚で仕事に励んだり、情報収集の仕方や視点の持ち方を変えたりすることで、どんな仕事にも「面白さ」は見出せるはずだ。

 何よりも大切なのは、上司自身が仕事の「面白さ」を体現していることである。
 上司自身が仕事に探究心を持ち、好奇心旺盛な姿勢を見せること。
 これが、最高の部下育成につながることだろう。

(本書は『「悩まない人」の考え方』に関する書き下ろし特別投稿です)

【執筆者プロフィール】
横山信弘(よこやま・のぶひろ)
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント
最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成する部下の育て方』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。