高知県に実際にある
2つの駅

 確かに変わった名前である。でも高知県には「後免駅」と「後免町駅」が実際にあるのだ。嵩のモデル・やなせたかしは少年時代、後免町で過ごしていて、この駅や町おこしに一役買っている。

 後免町にはやなせたかしロードがある。今年の夏休みには『あんぱん』の聖地巡りで後免町を訪ねる人が増えるのではないだろうか。ちなみに、香美市立やなせたかし記念館アンパンマンミュージアムから後免町は電車で1時間くらいだ。旅行の夢が広がってくる。

 朝ドラでは、序盤に主人公の故郷が舞台になったあと、上京してしまって、故郷があまり出てこなくなることが少なくないが、『あんぱん』は高知の話が戦後も続く。嵩とのぶが戦後、高知新聞社で働くからだ。これこそが、モデルのやなせたしと暢の真実の出会いの場所であり、高知新聞のエピソードにも力が入っているらしい。

 と、先のことはさておき。ここからは第31回を順に振り返っていこう。

 慰問袋活動によって、戦地の兵隊さんからお礼の手紙が届き、のぶはますます「愛国のかがみ」としての自覚を持つ。

 夏休み、実家に戻ったのぶは、教師になるため、母校で働きたいと頼みに行く。だが、なぜか反応は芳しくない。このとき、うさ子(志田彩良)も一緒だが、彼女は卒業しても女子師範学校に残りたいと言う。すっかり黒井先生(瀧内公美)に心酔しているのだ。

 先週、のぶが黒井に褒められていたとき微妙な表情をしていたのは、黒井の視線が自分に向いていなかったからだろう。おそらくうさ子はのぶに対して悪意はもっていなくてふつうに友情を感じている。ただ、黒井のことになると気になってしまう。それだけのことのようだ。

 そういう描写はとても人間らしいが、若干わかりにくく、先週、微妙な顔をしていたにもかかわらず今週は素直に笑顔でのぶに拍手を送っていたので違和感を覚える視聴者もいるのではないだろうか。

 学校からの帰り、商店街を歩いている途中で、のぶが郵便局に寄ったため、嵩と健太郎とメイコの一行と残念ながらすれ違ってしまった。