ネットにはない「本当に眠れる寝具」の選び方
「病院に行っても治らなかった不眠の悩みが解決した」「普段なかなか寝ない子どもがスヤスヤ眠った」――感謝の声、続々! 睡眠専門医も納得の2万人を救った「快眠メソッド」を初公開。夜、ぐっすり眠れないという不眠の悩みを医者や睡眠導入剤に頼る前にやるべきこと。それは、寝心地を大きく左右する寝具の見直し。加賀百万石の歴史都市・金沢で江戸時代に創業し、289年の歴史を誇るふとん店「眠りにまっすぐ乙丸屋」の12代目店主は、不眠に悩む人やもっとぐっすり眠りたいという人に向けて、快眠のアドバイスを施して評判だ。初の著書『とにかくぐっすり眠りたい 老舗ふとん店の12代目がこっそり教える快眠法60』(ダイヤモンド社)では、寝具を味方にして快眠に導き、仕事に家事に最高のパフォーマンスを発揮できる60+プラス1」の方法を、さまざまなエビデンス(科学的根拠)とともに徹底指南! 医者や学者が語ってこなかった素朴にして最も影響の大きい「寝具」の視点から、あなたを快眠に誘う。医学監修:森川恵一(日本睡眠学会総合専門医)
※本稿は、『とにかくぐっすり眠りたい 老舗ふとん店の12代目がこっそり教える快眠法60』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

肩こりと不眠が改善した“眠りの処方箋”とは?Photo: Adobe Stock

少し歴史を振り返らせてください

私の地元・金沢は加賀百万石の城下町です。私の先祖も創業当時は、金沢城主・前田家の御用達として武士の「裃(かみしも)」をつくって売っていました。

裃とは、肩の張った肩衣と袴(はかま)の上下セットを同じ色に染めたもの。江戸時代の武士の礼装として需要がありました。

昔の寝具店は「作って売る」が常識だった

長い武家の時代が終わり、明治になって裃の需要が途絶えると、6代目までは呉服、荒物(オケ・ザル・箒<ほうき>など)、文具といった生活必需品を扱うようになり、7代目から寝具販売を始めました。明治21年(1888年)のことです。

私の先祖に限らず、明治から昭和の中期くらいまで寝具店の多くは、単に寝具を売るだけではなく、製造も担っていました。いまでいうと、ファーストリテイリング「ユニクロ」のような「製造小売り(SPA)」だったのです。

それだけに寝具に関するノウハウを自ら持っていました。

綿布団の時代と寝具店の黄金期

昭和の中期前後まで、日本の寝具の主役は「綿布団」でした。

掛け布団も敷き布団も、綿を何層かに重ねてつくり、その製造と定期的な打ち直し(リニューアル)を一手に担うのが寝具店でしたから、ビジネスとしては高い利益率を誇っていたと思います。

激変の時代を乗り越えて

しかし時代が巡って、化学繊維でつくられた安価な布団や羽毛布団が、製造原価の安い海外から輸入されるようになり、昭和が終わってバブル経済も崩壊した頃には、綿布団を手広く扱ってきた寝具店が続々と店を閉じることになります。

そんななか、私の先代を含めて、その荒波を乗り越えた寝具店がありました。

「スリープテック」の波に乗って

すると2000年前後から、世界的な「快眠ビジネス(スリープテック)」ブームが始まり、2000年代前半には日本でもオーダーメイド枕、オーダーメイドマットレスが登場するようになり、そこへ商機を見出した寝具店が次々と復活を遂げます。

その後、ネット通販や大規模家具チェーンでも寝具が格安で買えるようになり、昔ながらの小規模な寝具店としのぎを削っています。

日本では異業種から寝具業界に参入するベンチャー企業も相次いでいます。私たちのような小規模な寝具店は、価格面ではネット通販や大規模家具チェーンには太刀打ちできません。

ある女性のお客様のエピソード

私が何よりも大切だと思っているのは、「寝具」を売ることではなく、「ぐっすり眠りたい」という多くの人が抱える問題の解決策を提案するという“発想の転換”なのです。

以前、30代女性のお客様が来店なさったときのこと。お話をうかがうと、首と肩のこりがとれなくて夜ぐっすり眠れず、枕の代わりにタオルを重ねて、高さを調整しながら眠っていたそうです。

しかし、どうしても首と肩のこりがツラくて、私のもとへ相談に訪れたのです。

適切な寝具でこりも不眠も改善

私は、まずは適切な寝姿勢をレクチャーしたうえで、その人に合った枕の高さと好みの材質を見つけ出しました。

そして、2週間後にお客様が再び来店した際には、病院や治療院に通うことなく長年の首と肩のこりが解消し、ぐっすり眠れるようになったと笑顔になっていたのです。

私たちの使命は「眠りの提案」

寝具を売るための道具として「眠り」を利用するのではなく、寝具を通して「ぐっすり眠る」方法を提案する。

このノウハウを評価してくださったからこそ、これまで延べ2万人以上のお客様にご来店いただけていると考えています。

睡眠の質を劇的に変える、寝具の「5つの見直しポイント」

私がこれまで2万人を超えるお客様と向き合い、実感してきたのは、正しい寝具選びが“眠りの質”を左右するという厳然たる事実です。

高級な寝具が良いとは限りません。大切なのは、「自分に合っているかどうか」。ここからは、あなたの眠りを劇的に変えるために見直すべき寝具の5つのチェックポイントをお伝えします。

① 枕の「高さ」は首のカーブに合っているか?

合わない枕は、首や肩のこり、頭痛、いびきの原因になります。

理想は、仰向けになったときに額・鼻・アゴがまっすぐになる高さ。横向きで寝る人は、肩幅に応じた厚みが必要です。

店頭では実際に横になって、「首の後ろにスキマができないか」「寝返りがしやすいか」を確認しましょう。

② マットレス・敷布団の「硬さ」は体重と体型に合っているか?

体圧をうまく分散できない寝具は、血流を妨げて疲労回復を阻害します。

仰向けで寝たときに腰が沈みすぎないか、浮いていないかをチェック。体格の良い方は「やや硬め」、細身の方は「やや柔らかめ」が基本ですが、その基本にとらわれず、寝返りが打ちやすいかどうかが最も重要です。

③ 掛け布団の「重さと通気性」は快適か?

重すぎる布団は寝返りを妨げ、浅い眠りの原因に。逆に軽すぎると冬は寒さで目が覚めてしまいます。

理想は、体にふんわり沿って、適度に重みのある布団。季節や体質に応じて、吸湿性・放湿性の高い素材(羽毛・ウール・和綿など)を選ぶと快適さがぐっと増します。

④ 寝具全体の「サイズ感」は合っているか?

実は、寝返りのしやすさは布団のサイズにも大きく左右されます。枕が狭すぎて頭が落ちる、敷布団から肩がはみ出す、掛け布団がすぐズレる……そんな状況では安心して眠れません。

敷布団は肩幅+30cm以上、掛け布団は体に巻き込める余裕のあるものが理想です。

⑤ こまめに「手入れと交換」ができているか?

どんなに良い寝具でも、へたった布団や汚れた枕では快眠は得られません。枕は2~3年、マットレスは10年前後が交換の目安。敷き布団はへたり具合を確認して、早めの打ち直し・買い替えを。

さらに、布団乾燥機や除湿シートを活用し、湿気・ダニ対策も徹底することが大切です。

「自分に合った寝具」が、人生を変える第一歩

寝具は単なる道具ではありません。身体にもっとも長く触れる“睡眠のインフラ”です。

「寝具が変われば、眠りが変わる。眠りが変われば、人生が変わる。」――それは、私自身とお客様の経験から確信を持って言えることです。

※本稿は『とにかくぐっすり眠りたい 老舗ふとん店の12代目がこっそり教える快眠法60』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。